2026年5月4日月曜日

つる薔薇、漫画と小説

 玄関のそばの通路に電柱が立っており、東京電力にその場所を貸している。無機的なコンクリートの柱が何の意味も感じさせずに不愛想に立っているのが殺風景であり、引っ越してきて家を建て直すときにその電柱の根元につる薔薇を植えた。今では2メートル近くに成長し、電柱を抱きかかえるように枝葉を伸ばしている。
 そのつる薔薇の手入れは伸びた枝を切り落とすだけで、放っていても枯れることもなく20年ほど緑の葉を保ち続けている。毎年白い小さな花を咲かせ、気持ちを柔らかくしてくれる。いつもはほんの少しの数しか咲かないが、今年は沢山咲いた。こんなに多く咲いたのは初めてこと。最初はいつものように限られたところにだけ咲くのかと思っていたが、日にちが経つに連れて全体に散らばるように蕾が増え、嬉しくなっていた。

 <いしいひさいち 『剽窃新潮』(新潮社、2025年)>:登場人物の自己認識のない屈折した心理とそれを真摯に笑う編集者と読者。素顔を出さない“いしいひさいち”は何故か“やくみつる”が頭に浮かぶ。

 <いしいひさいち 『ROCAコンプリート』(徳間書店、2025年)>:ROCAシリーズ完全版、といってもこの本を発注するまでROCAを知らなかった。何かに夢中になって一途になり、夢を叶え、それを支える碌でもない人が温かい。町を俯瞰する最後の絵が素敵。

 <児島青 『本なら売るほど (3)』(KADOKAWA、2026年)>:古本屋-古書店と呼称するのがいいのかもしれない-が居住する町から消えて久しい。いやいや書店が少なくなっている。自宅から徒歩数分の、よく通っていた書店がなくなって随分と経つし、駅まで歩く途中にあった書店も昨年閉じてしまった。駅近くにある書店は文房具も売っていて、棚に並べられる本の種類は中途半端だし、レイアウトも好みでない。車で20分ほどかけることになるショッピングモールの中にある書店は比較的大きいが、ちょいと立ち寄ってという手軽さの距離にはない。で、この漫画に描かれる古本屋さんがある町とそこに立ち寄る人々が羨ましくもある。

 <飯島和一 『南海王国記』(小学館、2025年)>:時代は17世紀、明を倒した清朝に対し、台湾を拠点として抵抗を続けた鄭成功の生涯を広大なスケールで描く。鄭成功は長崎生まれで母は日本人、国姓爺とも称した。この程度の知識しか持ち合わせていないが飯島さんが活写する世界を味わおうと期待した。しかし、中国南海史が年月に沿って歴史描写のように淡々と語られ、そこには人物の心理描写がなく会話も官僚の無味乾燥なやりとりと思え、次第に読むのがつらくなってきた。極端に言えば、歴史の詳説解説書を読んでいる感じである。・・・という読中感でもって飯島さんの本では初めて途中で投げ出した。

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