2023年3月30日木曜日

花冷え、酒を媒介にしての女性との会話

 雨模様で寒さが続いている。まさにこれが花冷えというのだろう。庭に咲いた花も既に散り始め、ウォーキングのなかで眺める桜ももうピークを過ぎて、緑の葉が雨の輝きを増幅している。そして、それはそれで綺麗である。

 定期的に通う病院でいつもと変わらぬ診察と処方箋が出され、薬を止めるのが目標だからねと言う医師の言葉に信頼が増す。まぁ少し高めの血圧と若干高めの中性脂肪であっては年齢的には当然という気もする。
 定期的な採血をしているときの消毒で、看護師さんがアルコールは大丈夫とですかと確認をし、はいと返事をしたら内側はどうですかとにこやかに尋ねられ、はい大好きですと応え、そのときの40歳前後(多分)の彼女が綺麗で素適に感じた。

 ノートPCを購入したとき、量販店で対応してくれた20代後半から30代前半と思しき女性スタッフと雑談を交わした。福島県田村市の出身であること、日本酒が大好きであること(ウィスキーは飲めない)と会話が弾み、自分は会津高校出身であることに併せて会津の酒や東北地方の銘酒、埼玉県の酒などを紹介したら熱心にメモをとり、飲んでみようと表情を和らげ微笑んでいた。・・・酒は飲まなくとも、酒を媒介にして会話が弾みその空気に酔うことができる。

 <呉勝浩 『スワン』(角川文庫、2022年/初刊2019年)>:越ケ谷レイクタウンをモデルにしたショッピングモール・スワンで襲撃テロが発生し、事件に巻き込まれたいずみと小梢。いずみは過去に小梢からいじめを受けていた、逆な言い方をすれば小梢はいずみにいじめを加えていた。
 大勢の人間が銃やナイフで殺され、そのなかの一人の老女の死の状況を調査する弁護士のもとに事件の被害者や関係者が定期的に集まり、事件当日の各人の状況を時系列に話していく。虚実を交えた状況説明に事実と虚偽が明らかにされ、被害者と生き残った者の状況が明らかになっていく。そして小梢の状況といずみの関係性の中で事実が(登場人物にではなく)読者に理解される。ショッピングモール・スワンとチャイコフスキー“白鳥の湖”のスワンがストーリーの中で鮮やかに組み合わされる。
 作者は「中学生時代に映画の面白さに目覚め、大学では映像学科に進んだ」とあり(解説)、やはり感性、想像力、創造力は生まれ持ったものであり、その上で小説は生れるものだと改めて強く感じた。

2023年3月27日月曜日

4年ぶりの花見

 高校同窓会の4年ぶりに花見が計画されたが、残念ながら25日土曜日のこの日は雨。恒例の上野公園での花見~居酒屋での宴会は予定変更で始まりからいきなりの宴会となった。当初の参加予定者に4名の欠席がでてしまった。時間繰り上げで欠席、家族内に体調不良者がでて欠席、本人が体調を崩し欠席、飲酒不可となり宴会だけの出席は止める、以上が欠席の事由で結局参加者は9名となった。会津若松、栃木県さくら、横須賀、佐倉、市川、春日部、足立区、上尾(2名)の各地から参加。2名は酒が飲めないおよび飲まない。

 12時にKYとSJと待ち合わせ、傘の下から桜を眺め、不忍之池沿いに歩をすすめ宴会場に向かった。
 宴会は13時から開始して17時15分頃にはお開きとなった。上野駅周辺で皆と別れ、山下口から入って久しぶりに“みはし”のあんみつなどを買い、北千住構内で見かけた桔梗屋の出店でこれまた久しぶりに信玄餅を買う。これらは連れ合いへのおみやげ。そして空腹を覚えたのでこれもまた4年ぶりになろうか回転寿司みさきでハイボール3杯と寿司幾皿かを飲食し、眠ってはいけないからと電車内では立ったままに春日部まで移動し、コロナ禍の3年間で3回目となるバスに乗って帰宅。
 楽しい一日であった。高校卒業から55年も経ってそれなりに年齢の重りは容姿などに見られるが、また一緒の時間を過ごしたいものである。




2023年3月26日日曜日

WBC、New PC

 WBC、日本がアメリカに1点差で勝利し2009年以来の優勝。そうか、前回の優勝は定年退職した年か、まだ60歳の時だったかと些か感傷的になる。テレビや新聞で繰り返し大きく報道されているWBCだがテレビ中継はほとんど見ない。見てもハイライトなどである。4時間前後も長い試合は退屈してしまうし、多くは投手と捕手の間をボールが行き来するだけでつまらない。それに、一丸となってチームプレーをするということが野球の場合にはよく理解できていない。また、ニッポンという括りで感動を前面に出す報道にはうんざりする。一つの括りで物事が語られと視線をずらしたくなる。

 習近平がプーチンと会った。独裁者同士は共有する価値観があって気が合うのだろう。岸田がウクライナを訪問した。薄っぺらな言葉を並び立てるこの人は、またもやしゃもじで言葉をすくって存在を誇示したいのだろうか。トランプは逮捕されると言っては抗議を煽っている。記憶力の薄い高市某は捏造だと叫ぶ。・・・・人間社会というのは悲喜劇であることは確かである。

 1Fで使用しているPCの調子が落ちている。8年間の酷使で草臥れてきたのだろう。代替品としてDELLのPCを購入。WIFI 6対応は有線LANを不要としていて端子口もない。無論通信速度は有線LANと変わりない。
 第12世代CORE i5は快調で、余っていた8GBのメモリーを追加装着。裏蓋を開けるのに慎重を要した。会社勤めときは使用した時期があったが自宅でDELLを購入したのは初めてのこと。
 これで家にあるのはノートPC3台と安価ミニPCの1台となった。机の回りはオーディオやPC、楽器関連で乱雑な配線となっている。

 <小西マサテル 『名探偵のままでいて』(宝島社、2023年)>:レビー小体型認知症の老人が安楽椅子探偵を、孫娘の楓がMCをつとめる、連作短編集。脇役は小学校の教員先輩である岩田、彼の親友の四季。古典ミステリーの薀蓄があり、日常的な生活の中での事件への推理があり楽しめた。が、一方では途中から倦きてくる。第1章から最終章まで舞台と登場人物はつながり、最終章のエンディングはピシッとキレイにホンワカと決まる。2023年/第21回の「このミス」大賞受賞作。

 <中島要 『神奈川宿 雷(いかずち)屋』(光文社時代小説文庫、2022年)>:雷屋は神奈川宿の茶店で二階ではもぐりの旅籠を営んでいて、その2階に食事を運んだり掃除をしたりするのが18歳のお美乃。読み書きは出来ず、ご面相は山桜で劣等感ももっている。だが好奇心旺盛で客が死んだ真相を探ろうと動く。時は幕末、横浜では異人も女郎屋に通ったりし、一方では攘夷派が暗躍し役人もその動きを探る。幕末の慌ただしい中で働き、謎ときも行い、役人も絡んでくる。
 まぁまぁ面白いのだが予定調和的に中途半端な感じもして物語は幕を閉じる。
 山桜は花が散る前に葉が出る。すなわち花(鼻)より先に葉が出るということで、山桜は出っ歯を意味する。

 <中島要 『大江戸少女カゲキ団 五』(ハルキ文庫、2022年)>:シリーズものとは知らずに(表紙の「五」が小さい)買ってしまった。これがその最終刊のようである。つまらないので中核の物語は途中から斜め読みし、7年後の〆のシーンはきちんと文字を追った。
 「着物始末暦シリーズ(全10巻)」が大人気シリーズと最終頁に書かれていたが、この作者はこれでお終い。

2023年3月15日水曜日

花、開く

 3月も中半、手入れを怠っている、我が家の庭の花開く。
 最後に載せている梅は柵の外。







 <西山太吉・佐高信 『西山太吉 最後の告白』(集英社新書、2022年)>:沖縄返還密約事件(沖縄密約事件/西山事件/外務省機密漏洩事件)の西山太吉さんが先月24日に91歳で亡くなった。男女のスキャンダルあるいは機密情報入手手段の是非に視線を移し、密約という本質を見つめることがなかったことに日本の政治体質と報道体質を感じていたし、併せて、市川房枝などの著名な女性政治家が「情を通じ」という面に視座をおいたことに彼女等の想像力の乏しさ、思考の甘さを思っていた。以前からのこの思いを補強するように読んだ。
 以下、面白いと思った幾つかの引用;
 「小泉は日米閏係と口中関係という二次方程式を解けなかった。小泉が抜擢した安倍は一次方程式も解けず、安倍後継の福田康夫は最初から解く気はなく、麻生太郎に至っては、方程式の意味も分からなかった」というのは佐高さんの説。
 「現場で権力握っているということは、それだけ頭使うし、同時に自意識が非常に強くなるから、血液の循環も良くなる」。だから「権力を握っていると長生きする」。
 「上に行けば行くほどに、司法も国家権力と一体になる」。
 「あの兄弟の特徴は教条主義、法律至上王義というか、すべてをあらかじめ細かい約束事で縛ろうとする。カのある側はその方が都合がいい。しかし、弱者はそれによって骨の髄まで抜かれる。しかも、国益を害する不公平な約束は、国民の前に見せず、密約扱いにしてしまう。教条的支配というものが、そうさせているわけです」。あの兄弟とは岸と佐藤。
 「専制的、独裁的政治からは必ず秘密が生まれる」、「ドグマ的であり独断専行な人は、相手を全く無視するし、相手に寛容に接する余裕もないから、どうしても隠し事をしてしまう」。これは十分に実感できる。隠し事をすることは嘘をつくことにも通じる。
 「国家機密が日本のメディアによって暴かれたことがありますか? 1回もないよ。西山太吉だけですよ。国家機密の暴露は」。哀しいかなこれが現実。

2023年3月10日金曜日

ハートの穴、時代小説2点

 いつもの散歩/ウォーキングコースで、 “おすい”のマンホールすぐ近くにハート型をした小さな穴を見つけた。愛の陥穽に足を取られ、挙句の果ては蓋で閉じられて暗渠を流れる・・・というショートストーリーがふと頭に浮かんだ。



 <中島要 『酒が仇と思えども』(詳伝社文庫、2021年/初刊2014年)>:酒にからむ時代小説-人情話6編。
 「酒が言わせた言葉に文句を言うのは無粋の極み」なんて言って、酔っ払いを受け入れてくれる女性がいたらもう至福であろう。が、それは単なる酒好きの勝手な言い分ではある。
 「嫌なことを忘れるために飲む酒もあれば、本音を言うために飲む酒もある。でも、飲んで一番うまいのは祝い酒でしょう」。最後の言葉は肯定するが、前者二つの主張は好きでない。
 「大工と破れた番傘は、雨の間は出番がない」-そもそも破れた番傘に何の価値があるのだろうか。
 「下り酒だって波に揺られて価値が上がる。人も苦しい思いをしないと、一人前になれないんだよ」。そうだよ、宿酔を経験し、反吐を吐いて、時には雨に濡れた舗道で尻を打ち、連れ合いに怒られたりして酒を飲む苦しみを知り、そして楽しみを体得する。何かを得るには何かを差し出す、これは世の摂理。・・・欧州(多分)のことであるが船で揺られて運ばれたビールは美味い、だから船で揺られることを模して揺ら揺らする装置を作りビールを揺らした、という逸話を読んだことがある。

 <高瀬乃一 『貸本屋おせん』(文藝春秋、2022年)>:文化期の江戸は浅草。母親は男を作って出奔し、版板を彫る腕の良い職人だった父親は御公儀から職を奪われ、揚句に酒に溺れ川に身を投じた。天涯孤独となったおせんは本を読むのが好きで写本も書き、本を積んだ高荷を背負い、貸本屋として江戸中を振り売りして歩く。おせんが貸本屋稼業をしている中で出版にからむ事件が起こり、それを解決する。全編5話の楽しめる一冊。「オール讀物新人賞」を受賞した、著者初めての刊行本。続刊を期待する。