昭和25年函館での一家殺人事件、昭和49年の佃島一家惨殺事件、令和6年のかつての相場師の死体発見。昭和-平成-令和に跨がって事件を追及する鎌田・湯浅・草加・藤森の刑事たちが事件の連続性を追求する。途中途中に挟まれる世相や現実の事件に触れると、この小節は自分の同時代史的な感覚が滲み出てくる。
約550頁の長編であり一気読みすること出来ず、時間的な余裕もない中で何日間に分けて読み続け、退えている記憶力もあって何度か頁を捲り直しては登場人物の描写を振り返ることとなった。
満州、養護施設、親子の葛藤と思慕、ヤクザと銀行、病、DNA鑑定、、、、満州建国から現在までの社会世相を縦断し、個性的で魅力ある刑事たちと相俟って、作者の構成構築力や筆力に感服した。ただ最後に暴かれる佃島の事件における犯人の母への思慕は、こじつけっぽくもあり、無理を感じてしまった。そして復讐という強い動機、銀行内部組織、養護施設経営にもどこか無理を覚えてしまうのは自分の性格も背景にあるのだろう。都合よく証言する人たちのあっけらかんさにも作りの都合良さを思ってしまった。更に刑事たちを含む登場人物たちの内面描写が薄いと捉えた。なれど、楽しめた。
<清野とおる 『「壇蜜」②』(講談社、2026年)>:2冊目の「壇蜜」。刊行前に予約して購入。飽きの来ない面白さ。壇蜜さんの不思議だけれど愛すべきキャラクター。清野さんの優しさと人への柔らかいまなざし。
<木内昇 『雪夢往来』(新潮社、2024年)>:小説を読む楽しみが詰っている秀作。
『北越雪譜』出版までの鈴木牧之を主軸に据え、牧之と曲亭馬琴、山東京伝・山東京山・山東京水の人物が活写される。馬琴の嫌みな性格、馬琴の癇癖な息子宗伯、甲斐甲斐しく馬琴に接する宗伯の嫁路、おおらかな京伝、兄の名声と己の能力の間で自分を見つめ続ける京山、京伝の放蕩、挿絵を担う京山の息子京水。牧之の何人かの妻たちとの関わり、牧之の友人たち。
雪深い塩沢(南魚沼)の豪雪とその暮らしぶりを知らない江戸の人たちに向けた牧之の思いと馬琴や京伝・京山たち、およびビジネスで取り組む書肆経営者。木内さんの小説を初めて読んだ『櫛挽道守』で味わった小説の楽しみをここでも味わった。
牧之が名付けた「鶴齢」を買ってきて今も豪雪の南魚沼の情景に浸ってみようか。
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