ラクエル・ウェルチといえば、もちろん古い映画だが「ミクロの決死圏」も、そしてあの豊満な肉体も思い出す。
<小砂川チト 『家庭用安心坑夫』(講談社、2022年)>:『朝日新聞』2023年2月4日「(旅する文学)秋田編 美も冒険も、雪が生み出す物語 文芸評論家・斎藤美奈子」に次の記載があった。
「鹿角市で生まれ、今は東京で暮らす主人公の小波はある日、東京で「父」の痕跡を見つける。母に〈あれがあなたのお父さんよ〉と聞かされてきた人の名は尾去沢ツトム。同市内の廃鉱山を利用した施設「マインランド尾去沢(現在は史跡尾去沢鉱山)」の坑内に、坑夫の姿で展示されたマネキン人形(!)だった。小波は「父」を連れ出そうと決意する。現実と幻想が渾然一体となった作風はシュールかつポップ。鹿角市は即刻ご当地文学に認定されたし」
「鉱山文学」とあったので購入したが、「シュールかつポップ」なこの「鉱山文学」小説には全く惹かれなかった。ただ9年前の5月に訪れた”マインランド尾去沢”の閑散とした駐車場と廃鉱となった鉱山跡の風景を思い出させてくれた。
第65回群像新人文学賞受賞で第167回芥川賞候補。後半に入ってからは読むのが嫌になり斜め読みして本を閉じた。
<鈴木大介 『ネット右翼になった父』(講談社、2023年)>:検証対象となっている「父」は私より7歳年長だから、図式的に当てはめれば著者の立つ位置は私の息子であり、観察されているのは私ということになる。
癌に罹患し77歳で亡くなった父は晩年「ネット右翼」となったようで、死後父のPCからは「嫌韓嫌中」のフォルダーが見つかり、部屋からは『月刊Hanada』、『WILL』、『正論』、『SAPIO』、『新潮45』などがあり、『諸君!』もあったかもしれない。そして典型的な「朝日」嫌い。
親しくはないが「ネット右翼」っぽい言葉を発する私と同年代の知人がおり、どうしてああなってしまうのかと疑問に思っている。もしかしたら本書でそのヒントが得られるのかもしれないと期待した。結局本書で描かれる「父」はネット右翼ではなく、父の死に冷淡な感情しか抱かなかった著者が父の生前を追い求め、著者自身を見つめ直すことだった。結果、杉田俊介氏の言葉を借りれば「和解に必要だったのは父親の異物性に出会い直し、善悪や清濁を併せ持つ他者の「等身大の像を取り戻す」ことだった」(『朝日新聞』2023年2月23日)。
著者の叔父は著者に次のようなことを言う。すなわち、ある世代の人を思うときはその年代を合わせ考える必要があると。当たり前のことである。しかし、下手するとあの時はそういう時代だったと安易に言い訳にして正当化してしまう懸念も感じる。
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