2023年2月25日土曜日

ラクエル・ウェルチ、本1冊

 ラクエル・ウェルチが亡くなった。享年82歳。55年前の18歳の時だったか、多分新宿歌舞伎町だったと思うが、映画館の上部に大きく描かれていた「恐竜100万年」の看板が思い出される。あの頃は園山俊二の「ギャートルズ」も人気を博していたのでちょっとした石器時代ブームだったのか、「フリントストーン」なる映画もあった。
 ラクエル・ウェルチといえば、もちろん古い映画だが「ミクロの決死圏」も、そしてあの豊満な肉体も思い出す。

 <鈴木大介 『ネット右翼になった父』(講談社、2023年)>:検証対象となっている「父」は私より7歳年長だから、図式的に当てはめれば著者の立つ位置は私の息子であり、観察されているのは私ということになる。
 癌に罹患し77歳で亡くなった父は晩年「ネット右翼」となったようで、死後父のPCからは「嫌韓嫌中」のフォルダーが見つかり、部屋からは『月刊Hanada』、『WILL』、『正論』、『SAPIO』、『新潮45』などがあり、『諸君!』もあったかもしれない。そして典型的な「朝日」嫌い。
 親しくはないが「ネット右翼」っぽい言葉を発する私と同年代の知人がおり、どうしてああなってしまうのかと疑問に思っている。もしかしたら本書でそのヒントが得られるのかもしれないと期待した。結局本書で描かれる「父」はネット右翼ではなく、父の死に冷淡な感情しか抱かなかった著者が父の生前を追い求め、著者自身を見つめ直すことだった。結果、杉田俊介氏の言葉を借りれば「和解に必要だったのは父親の異物性に出会い直し、善悪や清濁を併せ持つ他者の「等身大の像を取り戻す」ことだった」(『朝日新聞』2023年2月23日)。
 著者の叔父は著者に次のようなことを言う。すなわち、ある世代の人を思うときはその年代を合わせ考える必要があると。当たり前のことである。しかし、下手するとあの時はそういう時代だったと安易に言い訳にして正当化してしまう懸念も感じる。

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