2025年7月17日木曜日

本を売る、小説2冊と漫画

 読んだ本を5ヶ月ぶりに引き取ってもらった。キャンペーン中だったので予想よりも高くなり新刊の単行本なら3~4冊、スコッチウィスキーなら2本くらいは買えるかな、という金額。

 <逢坂冬馬 『ブレイクショットの軌跡』(早川書房、2025年)>:ブレイクショットはSUVの商品名、およびビリヤードでのラックを崩す最初のショット。577頁の長編小説。ブレイクショット組み立て現場でのプロローグから始まり、「アフリカのホワイトハウス」(ホワイトハウスはブレイクショットで車体には日本の会社のロゴがある)に移り、本章とも言える日本でのブレイクショットの所有者の変遷が編まれる。本章とアフリカでの物語が交互に描かれる。プロローグからエピローグまで表層的には交わらない人生模様がブレイクショットを通じて全てが繋がっている。投資ブログ、SNS、LGBTQ、パターナリズム等々の現代の世相を編み込み、読んでいて何という優れたストーリー構成なのだという驚きがあって、前2作とは異なる著者の小説世界に感嘆した。が、物語の最後の括り方がどうしても安易に感じてしまい、ある種の、いい意味での、しこりのような余韻が残らない。でも今年になって最も楽しめた小説であった。

 <さそうあきら 『絵師ムネチカ①』(双葉社、2025年)><同 『絵師ムネチカ②』(同)>:著者の絵を見るのは『マエストロ』以来で17年振り。四六時中絵を描く特異な少年とそれを取り巻くフツーの人々とミステリーっぽさに惹かれる。

 <王谷晶 『ババヤガの夜』(河出文庫、2023年/初刊2020年)>:日本人作家として初の英国推理協会賞(ダガー賞)受賞作、2021年の日本推理作家協会賞長編部門の最終候補作。ネットによれば、ババヤガとはスラヴ民話に登場する魔女であり、また、映画「ジョン・ウィック」のジョン・ウィックが「ババヤガ」という異名で呼ばれることから、伝説の殺し屋を指す言葉としても知られています、とのこと。ここに描かれる暴力性には驚かさされるとともに、仕掛けにはあっそうという感想しかない。また、何故にこの小説が英国で絶賛されるのか分からない。この小説の惹句になっている「シスターフッド」が描き切れているのだろうか、それが深い意味の言葉とすれば、この小説では水面の波紋しか表現できていなくて深みに入っていく感が薄い。
 描かれる暴力性はホラーのような気持ち悪さがあって、それでも引き込まれて読み続けたが、最後は都合よくまとめたな、という感が強い。前文の繰り返しになるが、立場の違う依子と尚子の結びつきの内実が描写されていなくて隔靴掻痒、消化不良、まずくはないけど惰性で完食した・・などという場末の飲み屋のような落ち着きのない感覚が残った。在日朝鮮人らしき柳のそれまでのストーリーも余りにも簡単で結局は登場人物の内面描写がなさすぎる。もしもこれが映画やドラマになっても見もしない。結論は、今話題になっているし、すぐに買い求めたがその先走った気持ちとは裏腹につまらなかった。

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