2025年8月25日月曜日

夏の甲子園、漫画三昧

 夏の甲子園高校野球。歴史に刻まれる二つのことは、一つは沖縄県の高校が夏で初の優勝。もう一つは広陵高校の甲子園2回戦辞退。後者については消えることのない歴史的事件であり、人間は長きにわたって上に立つと組織とその人間は必ず腐る。人が変質するのではなく、人は本質的にそのような宿命めいたものを有している。新陳代謝がなされない組織構造は必ずや土台から腐る。
 決勝戦では沖縄尚学と日大三高の戦いで6-4位の気持ちで沖縄尚学を応援していた。また、日大三高では一塁手倍賞を思い出す。

 <山田英生・編 『戦争と漫画 戦地の物語』(ちくま文庫、2025年)><同 『戦争と漫画 銃後の物語』(同)><同 『戦争と漫画 焦土の記憶』(同)>:夏になると毎年繰り返され報道されるアジア太平洋戦争。「戦争を知っているやつがいるうちは日本は安心だ。戦争を知らない世代がこの国の中核になった時が怖い」と喝破していたのは田中角栄。そして今現実に日本の政治は過去から視点をずらし、安易な底の浅い感情を昂ぶらせている。結局は「歴史は繰り返え」しているのだろう。
 76年間生きてきて、その間に同じようなことを何度見聞きしてきたのであろう。組織化された中にいる人間の惰弱・詭弁・保身等々は嫌と言うほどに体験してきた、そして、落ち着くところはそのような現実に対して自分をどう位置づけるのであろうかという繰り返される自問である。この漫画集にはそれらが凝縮されている。
 中学1年の頃、奥会津の中学校校舎で低空飛行する戦闘機(練習機ヵ)に出くわしたことがある。人生の中で最も近くで戦闘機を見たのはそれが最初で最後だった。今でも強く記憶に残っている。

 <さそうあきら 『絵師ムネチカ③』(双葉社、2025年)>:『神童』と『マエストロ』に続く3作目の3巻目。狂気の世界」、異常な世界、一つのことに執着するある種の落ちこぼれ人間たちの世界。よく分からないが引き込まれて3巻目。Wikipediaに書かれていた「「無垢な存在」と「世界」との出会いを主題とすることが多い」との記述で少し理解できたような気がする。

2025年8月13日水曜日

眠れない、もうひとつのブログをアップ

 夜ベッドに入って眠りについてから5時間-時には4時間-ほど経ってトイレに行く。その後眠れなくなってしまうことが多く、しばらくボーッとしてから2度寝となる。そして睡眠不足気味となって昼寝をする。しないときもあれば2時間近く眠ってしまうこともある。以前は4時間も眠ってしまうこともあったがさすがに最近それはない。
 で、昨日は酔ったせいもあって夜早く眠たくなり21時半前にベッドに入った。結果2時半頃にトイレに立ち、眠れなくなり、しようがないので1時間タブレットでニュースを見てから起きてしまい、4ヶ月近く間が空いていたもう一つのブログ、鉱山関連を中心としたブログをまとめ、先ほどアップロードした。サボリ続けていたそのブログであるが、もう区切りを付けたいと思うのだがなかなか下書きを書く気力がなく、裏腹に多少焦っている。・・・兎にも角にももう一つのそのブログを今朝アップした。そして少し眠くなってきたので眠る。何という不規則な睡眠時間なのであろうか。

2025年8月10日日曜日

珍しい苗字、文庫本と漫画

 歯科医院で顔なじみになっているスタッフの方の苗字は全国で数百人しかいない珍しいものであり、今日その方と軽く会話をして予想する出身地方を問いかけたらまさにその通りであった。ただ結婚して苗字が全国でもベストテンにはいる名前となった(なってしまった)とのこと。しかし、旧姓にも愛着があり、勤務先でのネームプレートには旧姓のままでいるとのことだった。棄てがたいですよね、と言ったらそうなんですと微笑んでいた。そう、選択的夫婦別姓には賛成するのである。
 その日、酒屋さんで会計を済ますとき、その女性のネームプレートにはもっと珍しい苗字が刻まれていた。秋田県に多い名前ですよね、とその地方名を口に出して声をかけたら旦那さんがその地の出身であり、苗字の由来は義父に教えてもらったとのことだった。ご自身は秋田県を訪れたことはないそうである。この苗字の俳優の名前を言ったが彼女は会ったことはないと仰っていた。
 珍しい名前や読みにくい名前の人-大抵は飲食店やスーパーで出遇うことが多い-に接すると必ずといっていいほどに声をかけてしまう。今までにも何度もそういうことがあったが、一日の中で2回も話しをすることができてラッキーな気分となった。

 <宿野かほる 『ルビンの壺が破れた』(2020年、新潮文庫/初刊2017年)>:いわゆる書簡体小説。「ルビンの壺」とは黒地に白地を組み合わせ、向き合う二人の顔、あるいは壺(杯)にも見えて両方同時に認識できない多義図形。本書の表紙を確認すればすぐに分かることだが、カバーをつけていたために気付かなかった。 フェイスブックでメッセージをやりとりする一馬と未帆子は30年近く前に大学演劇部での部長と劇団員で二人は結婚する予定だった。が、結婚式当日に未帆子は式場に姿を現さず以来二人は互いに連絡することはなく、未帆子のフェイスブック投稿を契機に一馬はメッセージを送り、未帆子は間を空けながらも返信する。そのやりとりの間で二人の関係性、二人それぞれの過去が浮き出てくる。未帆子は本当に未帆子当人なのか、一馬の30年間の空白は何だったのか、未帆子はなぜ結婚式当日から姿を消してしまったのか、読んでいる途中で想像はしてみるのだが、後半の後半になって全てが明らかになる。帯にあるように確かに「どんでん返し」だった。と同時に未帆子の大学時代の素性も明らかになる。そして最後に太字にされた文章で小説は閉じられる、「とっとと死にやがれ、変態野郎!」と。
 楽しめた、と同時に覆面作家”宿野かほる”は男性ではなかろうかと思い、でも名前から結びつくようにやはり女性なのかとも思える。その揺らぎは抱き合うとかの表現ではなくストレートに「セックス」という表現を多用している点に多少違和感を覚えたからでもある。しかし、読み終えると二人のかつての学生時代の生活模様からすればその直接的な表現が適していると思える。そこまで計算された描写であるならば作者の表現力は優れていると思う。

 <児島青 『本なら売るほど (2)』(KADOKAWA、2025年)>:本にまつわる物語は楽しめる。今回も期待通りにゆったりとした気分になり、描かれると人物の絵と台詞にストンと入り込んだ。第7話の「意味もなく楽しいとき人は幸せだ」は本当にそう思う。楽しさに理屈づけをしたり、楽しさを求めて彷徨ったりしているときは恐らく幸せではないのであろう。理屈付けするその行為を意味もなく面白がるとき、彷徨っていること自体を楽しむときは幸せなのであろう。

2025年8月9日土曜日

散髪屋さんでのひととき、文庫本2冊

 散髪に行き、「お久しぶりです」とスタッフの女性一人と互いに言葉を交わした。スタッフの方が3人おり、その中の一人の彼女と小説の話しをしたことがあり、以来自分の担当となったときは小説に絡む軽い会話をしている。しかし、最近は担当に着くことがなく、せいぜい目で挨拶をする程度だった。彼女はかなりの本好き(小説好き)のようで、先日はお孫さんとの話をしていた。孫がいるとは想像していなかっただけに少々驚いた。マスクを外したところを見たことがないし、こちらもマスクはしたままなので、もしも町中で会っても恐らくは双方とも気付かないであろう。
 散髪後に後頭部を鏡で確認したとき、少し頭頂部が薄くなってきたような気がした。彼女にそれを言うとつむじの辺りは薄く見えますよとフォローしてくれたが慰めの気持ちも入っていたのであろうか。

 <柚木麻子 『BUTTER』(2020年、新潮文庫/初刊2017年)>:『ババヤガの夜』と同時にダガー賞候補となったことで手に取った。
 美人でもなく、太っている女性による現実の「首都圏連続不審死事件」に題材を得たノンフィクション・ノベル。東京拘置所に収監されている梶井真奈子に独占取材しようと接触を図った週刊誌記者の町田里佳が、梶井の要求によって梶井の要求する食べ物・食べ方を実践し彼女にリポートする。繰り返すことで里佳は太り、内面も変化し続ける。里佳の内面の描写が独白的に述べられ、レシピが詳述される。
 レシピの描写に倦きてくるが小節の締めくくりに興味があって忍耐強く読み続けた。里佳と彼女の親友伶子と二人で、梶井の故郷新潟を訪れる頃からはやっと主人公里佳の変化に関心が強くなった。ともあれ、女性と女性の交友、登場する男性の存在の希薄に違和感があり、繰り返されるレシピと食べ物への執着には辟易する。
 世界的大ヒットと言われるし、英国では日本の小説の販売数量がかなり拡大し、その割合は『BUTTER』が大半を占めているらしい。この小説といい、『ババヤガの夜』が何故に海外で評価を得ているのか全く想像できない。

 <永井義男 『密殺処刑人 影山彦十郎始末帳』(2025年、コスミック文庫)>:永井さんの新シリーズ。
 やむなく勘当されて家督を弟に譲り、道場剣術よりも木刀・真剣の戦いに秀でる。船橋の漁師に寝泊まりして舟の櫓を漕ぐことを習熟し、江戸に戻ってからは船頭にもなり役所の密命で悪党退治をする。独自の剣術道場で剣道に励むなか、新たに入門した搗米屋の娘お波とともにこれからの展開が楽しみ。