2025年8月9日土曜日

散髪屋さんでのひととき、文庫本2冊

 散髪に行き、「お久しぶりです」とスタッフの女性一人と互いに言葉を交わした。スタッフの方が3人おり、その中の一人の彼女と小説の話しをしたことがあり、以来自分の担当となったときは小説に絡む軽い会話をしている。しかし、最近は担当に着くことがなく、せいぜい目で挨拶をする程度だった。彼女はかなりの本好き(小説好き)のようで、先日はお孫さんとの話をしていた。孫がいるとは想像していなかっただけに少々驚いた。マスクを外したところを見たことがないし、こちらもマスクはしたままなので、もしも町中で会っても恐らくは双方とも気付かないであろう。
 散髪後に後頭部を鏡で確認したとき、少し頭頂部が薄くなってきたような気がした。彼女にそれを言うとつむじの辺りは薄く見えますよとフォローしてくれたが慰めの気持ちも入っていたのであろうか。

 <柚木麻子 『BUTTER』(2020年、新潮文庫/初刊2017年)>:『ババヤガの夜』と同時にダガー賞候補となったことで手に取った。
 美人でもなく、太っている女性による現実の「首都圏連続不審死事件」に題材を得たノンフィクション・ノベル。東京拘置所に収監されている梶井真奈子に独占取材しようと接触を図った週刊誌記者の町田里佳が、梶井の要求によって梶井の要求する食べ物・食べ方を実践し彼女にリポートする。繰り返すことで里佳は太り、内面も変化し続ける。里佳の内面の描写が独白的に述べられ、レシピが詳述される。
 レシピの描写に倦きてくるが小節の締めくくりに興味があって忍耐強く読み続けた。里佳と彼女の親友伶子と二人で、梶井の故郷新潟を訪れる頃からはやっと主人公里佳の変化に関心が強くなった。ともあれ、女性と女性の交友、登場する男性の存在の希薄に違和感があり、繰り返されるレシピと食べ物への執着には辟易する。
 世界的大ヒットと言われるし、英国では日本の小説の販売数量がかなり拡大し、その割合は『BUTTER』が大半を占めているらしい。この小説といい、『ババヤガの夜』が何故に海外で評価を得ているのか全く想像できない。

 <永井義男 『密殺処刑人 影山彦十郎始末帳』(2025年、コスミック文庫)>:永井さんの新シリーズ。
 やむなく勘当されて家督を弟に譲り、道場剣術よりも木刀・真剣の戦いに秀でる。船橋の漁師に寝泊まりして舟の櫓を漕ぐことを習熟し、江戸に戻ってからは船頭にもなり役所の密命で悪党退治をする。独自の剣術道場で剣道に励むなか、新たに入門した搗米屋の娘お波とともにこれからの展開が楽しみ。

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