2025年10月27日月曜日

ミロ・シリーズ完読

 『顔に降りかかる雨』を再読してから1ヶ月かかりミロのシリーズを完読。楽しめた。桐野さんの他の小説も読みたくなるが、積ん読状態の本が少なくないので自制しよう。

 <桐野夏生 『ローズガーデン』(講談社文庫、2003年/初刊2000年一部改題)>:4編の短編集。自死した夫博夫とミロの出逢いと博夫の迷い。ミロが居住するマンションにての幽霊騒動。クラブの中国人女性の本当の気持ちを探るように男から依頼されていたがその男は殺され、一方で妻の浮気調査も調べる。電車にはねられて死んだ娘は実はSMの女王で、父親は遺品の処分を依頼され、ミロは事故は実は殺人であったのではないかと探る。

 <桐野夏生 『ダークネス』(新潮社、2025年)>:ミロのシリーズはこれで完読。最終刊はミロ60歳、ハルオ20歳。20年の年月の経過はあるが物語は最初から継続する。本巻ではハルオとミロの現在が交互に描かれ、そこに新しく登場する人物はほぼハルオと関わり、それは結局はミロの過去に繋がる。 医学部学生となっているハルオは人とのしがらみがないようにミロに厳しくしつけられ、ミロも沖縄でそのように暮らしている。同じ医学部学生の由惟との関わりでハルオはミロの過去と向き合うことになり、自分の父親とその周囲との人間に入り込み、陥穽に嵌まってしまう。刑務所に入っているジンホとの関わり、出所前後のしがらみ、そして復讐。ミロは一人で再び彷徨う。 楽しめた。というより桐野さんの物語の構成、描写、伏線、内面描写等々にただただ感服するばかりである。

ラグビー、小説等

 ラグビー関東対抗戦が後半に入った。なんと筑波大学が帝京を破った(18-14)。昨季は0-80だからとんでもない勝利だし、筑波は明治・慶応・帝京に勝利し、負けたのは早稲田だけ。早稲田が帝京・慶応・明治に勝てば、筑波の残り試合は青学・立教・日体大だから、今季は6勝1敗で2位に入る可能性が高い。
 早稲田は早い展開で青学に59-12で快勝するも内容的には反則を含むミスには今ひとつ不満である。矢崎は前日の日本vsオーストラリアでフル出場しているから青学戦でのFBは植木。HO清水健伸がPOM。左ウィングに入った山下恵士朗がキビキビした動きで今後もスタメンに出るであろう。早稲田の高速ラグビーは素晴らしい。接点でのいい動きがあのスピード展開に繋がっている。リザーブもいい動きをしていた。

 <桐野夏生 『天使に見捨てられた夜』(講談社文庫、1997年/初刊1994年)>:ミロの二作目。AVに出演したリナが失踪。その捜索願をミロに依頼してきたのがフェミニズム系出版社の渡辺。リナの暗い過去と捩れた性格、そして出生の謎を軸として、彼女の捜索と渡辺の死の真相に迫っていく。ヤクザや同性愛者の存在がミロに大きく関る中、ミロという個性が今ひとつ掴みきれないが、全体的ストーリー展開と人物の内面描写は優れているとつくづく思う。

 <桐野夏生 『ダーク 上』『ダーク 下』(講談社文庫、2006年/初刊2002年)>:成瀬は4年前に刑務所内で自死していた。それをミロに伝えていなかった父を見殺しにし、ミロは40歳になったら死のうと思っていた。かつての隣人トモさんと仲違いし、韓国人徐ジンホに偽装パスポートの手配を依頼して韓国名で韓国に渡る。ジンホと愛人契約を結ぶが村善との繋がりのある鄭に追われ、義父と暮らしていた久恵とトモさんに追われ、日本人の駐在員山岸に騙されて犯され妊娠する。ミロは山岸を殺し、ハルオを産む。山岸兄はヤクザでハルオを欲しがり、鄭はそれに絡んでミロを陥れようとする。ミロは夫に自殺され、友人を殺した成瀬に思いを寄せるが彼も自死し、義父も死に、ミロはこれもまたまともではない老女二人の助けもあって子を出産し、最後は沖縄に移住する。
 まともな人間は登場せず、まともな生活もない。同性愛、異性愛、覚醒剤、暴力、レイプ、殺人、ヤクザ、コピー品の売りつけ等々、異常な世界と今ひとつ掴まえどころのないミロの小説世界。桐野夏生さんの世界に改めて嵌まっている。

 <榎本博明 『絶対「謝らない人」』(詩想社、2025年)>:絶対「謝らない人」の事例と若干の心理分析と対処法。以下、キーワードの羅列。 モチベーション理論、内省的想像力、認知能力・メタ認知能力の欠如、判断力・忍耐力・記憶力の欠如ーこれは結婚・離婚・再婚との関係性を思い出したもの-、倫理観の欠如、謝罪の言葉の有無と罪悪感の表情の有無のマトリックスー許しのレベル、アルコールの近視眼理論、自己中心の文化=欧米=基本は自己正当化、間柄の文化=日本=自己コントロール/思いやりが基本、世間の目を意識する日本人、愚かな比較意識、欲求不満→攻撃行動、神に対する罪悪感と社会(世間)に対する罪悪感、謝らない人の硝子のプライド、謝らない人が覆い隠すもの=コンプレックス/自信のなさ/虚像を見抜かれる怖れ・・・、謝らない人の劣等コンプレックスを刺戟しない、謝らない人へ接触しない/関わりを持たない/期待しない分かってくれるはずと言う甘えを抱かない←謝らない人は共感性が鈍い/自分の言動の相手への影響が分からないし振り返りをしない←認知・メタ認知能力の欠如、、、、。

2025年10月8日水曜日

小説3冊

 <白川尚史 『ファラオの密室』(宝島社文庫、2025年/初刊2024年加筆修正)>:22nd「このミス大賞」受賞作。舞台は紀元前14世紀のエジプト。主人公セティは死んでミイラにされたが心臓が欠けているために冥界に行く審判を受けられない。現世に戻った彼(最後に明かされるが実は女性)が3日間の猶予を得て欠けた心臓を探す。親友のミイラ職人タレクと、異国の地で拐かされて奴隷となったカリの助けを得て心臓の欠片を探す。先王のミイラが消失する事件に直面し、その密室での謎ときをする。
 冥界(①)と紀元前14世紀の現世(②)と21世紀の現在(③)がホテルのコネクティングルームのように繋がっていて、セティが①と②をまたぎ、タレクが②に生き、異国(トルコ南部)から来てエジプトの神々文化に慣れ親しんでいないカリは②に生きるがその視点は③のようである。
 下半身が木でできているセティが自身の心臓を探すというシーン、神々の欲望と審判、密室から運び出されるミイラ、これらの世界に何の抵抗もなく入って物語を読むことができる。
 密室での謎ときがあり、その謎ときもミイラであるからこそ成立し、カリを騙すエジプト女性がいるし、悪辣な雇い主がいて奴隷のカリへのひどい仕打ちがあるし、寝殿造りの石運びがあるし、冒険もあるし戦もある。カリの内面の葛藤と絶望、そして不幸からの救いがあり、そこは古代エジプトであり、神々も出てくる。
 第2章でカリが唐突に現れて主人公になり、彼女がその後どう絡んでいくのか期待し、親に棄てられたと思っていた聡明な彼女も最後は幸福な生活に戻る。古代エジプトが現代に絡むミステリーではなく、古代エジプトでのミステリーという設定に新鮮さを感じ、冒険あり、不幸から抜け出す柔らかな心地となる展開もあって面白く読めた。
 興味があって数日前に衝動的に『図鑑 アフリカ全史』(東京書籍)を購入し、短い描写ではあるけれど初期文明エジプトの図を眺めたりして想像を広げ楽しんだ。

 <永井義男 『秘剣の名医 十九 幕府検死官』(コスミック・時代文庫、2025年)>:3編が収められている。伊織の「秘剣」が舞う場面はなく、さしずめ事件解決の知恵袋の役割の伊織は今風に言うとプロファイラーといったところ。
 妻お繁の機転が利いた発想や、魅力的な明るいキャラクターを活写する物語が欲しい。これは編集者が企画して永井さんに申し出なければならないことなのかもしれない。でも、この本がつまらないと言うことではなく、一気読みで楽しめる。

 <桐野夏生 『顔に降りかかる雨』(講談社文庫、1996年/初刊1993年)>:「第39回江戸川乱歩賞受賞作。最後のオチがそろそろだと期待して,案の定の真犯人がいて,この典型的パターンは今一つ不満。気に入った言葉:「大事なのは変だと感じる感性と,何故だと考える想像力だ」」、これは1993年時の読後短文。桐野さんの小説は全部で6冊しか読んでいなく、今回は再読。20年ぶりに村野ミロを主人公にした『ダークネス』が出されたことにあり、32年前に読んだときから愛着のあった「大事なのは変だと感じる感性と,何故だと考える想像力だ」にもう一度触れてみよう、そして読んでいなかったミロ長編三部作の残り二作を読んでから最新刊を開いてみようと思った。そのことが今回この小説を再読しようとした切掛。
 32年前、44歳のときは所謂精密機械製品の開発設計チームを束ねていたときで、当然の如くに設計・試作・評価のフェーズを繰り返す中では設計や試作部品の不具合に直面することは多い。それは簡単に言えば試作した製品モデルや部品に対して「変だ、上手くいかない、何かおかしい」と感じることから始まり、そして解決するためには「何故なんだろう、どこに原因があるのだろう」と考えることでもあった。設計者全員に共通することであり、それで、「大事なのは変だと感じる感性と,何故だと考える想像力だ」、それを強化するためにどうすれば良いのか(行動)を個々に考え続けていて欲しい、というようなことをチームに伝えて続けていた。この言葉は自分を取り巻く全てのこと-社会情勢や政治や自分のことなど凡ゆること-にあてはまると思っている。

2025年10月4日土曜日

ラグビー、ぎっくり腰、近所での交通事故

 9月28日大学ラグビー対抗戦は早稲田vs立教。その前に行われた筑波vs慶応戦では筑波が勝利すると思っていたらその通りになった。筑波大は明治・慶応に連勝で、次の早稲田戦が注目されるであろう。
 早稲田の立教戦は78(12T9G)-0と快勝。SO服部・FB矢崎・SH川端・No8松沼を見ることが出来て嬉しかった。その中でも松沼が途中出場しトライも取ったことが尚更に良かった。矢崎にはレベルの違いを再認識し、服部のキックも久しぶりだった。川端はもしかしたら糸瀬からスタメンを奪うかも知れない。服部と野中はダブルSO的な存在。早稲田佐賀から入った山下恵士朗も今後リザーブに名を連ねるであろう。

 ラグビーをテレビ観戦した日の夜、立ったときに突然に腰がピクッとし、初めてぎっくり腰になった。椅子から立ち上がるのも、ベッドからトイレに行くときも激痛に襲われ酷い目にあった。翌日には痛みはあるけれど少しは軽くなったのが幸いであった。

 昨日(10月3日)自宅から歩いて約300mの交差点で大きな交通事故。全国的なニュースとなっていて、見慣れた家や飲食店、消防署がテレビやネットニュースに映し出されていた。場所は、自宅から300mのところで幹線道路に出る最初の信号のあるところで消防署前の交差点。前日もここを渡ってセブン-イレブンに行ってた。