2020年7月15日水曜日

4冊のメモ

 <氏田雄介/西村創 『54字の物語 史』(PHP研究所、2019年)>:「くりぃむクイズ ミラクル9」のクイズに使われ、何かの記事でも目にしたことがある『54字の物語』シリーズ。試しに一冊をと思い「歴史」を軸とした本書に目を通した。感想は、”つまらない”。
 冒頭は、
  「野生の土器は活きがいい。捕まえたら、縄でしばりつけておかないと逃げてしまう。多少縄の跡がついても気にするな。」
 あまり面白くないので、いやらしく作ってみた。
  「あいつの器は具合がいいらしいと夫が言った。嫉妬心から私は縄で縛って焼いてやった。まさか後世まで名を残すとは。」

 <青木理 『時代の抵抗者たち』(河出書房新社、2020年)>:青木理の対談集。登場するのは、なかにし礼・前川喜平・古賀誠・中村文則・田中均・梁石日・岡留安則・平野啓一郎・安田好弘の9人。社会を正視し、鋭い感性で歪みを捉え、想像力豊かに政治的な発言をすると、この社会では「抵抗者」となってしまう。このカナシイ現実。

 <島田裕巳 『大和魂のゆくえ』(集英社インターナショナル、2020年)>:紫式部が『源氏物語』で書いた「やまと魂」は「漢才」に対する語で戦前の「大和魂」の意はない。宣長の「大和心」もこの「やまと魂」と同様である。安丸良夫が「人間の頭脳が考えうるかぎり身勝手で独りよがりな議論」と批判した篤胤や、正志斎、松陰あたりから「國體」や「神国」の語と結びつき戦前に「大和魂」がピークとなり、今はスポーツで使われる。
 そもそも「○○魂」というのはよく分からない、というか違和感がいつもある。近くの中学生が背中に「○中魂」と書かれたジャージを着ていると一体誰がどのような発想でそのようなジャージを作って生徒に着させているのか、疑問が拭えない。出身高校の地である会津の「会津魂」の語もよくわからない。「利を求めず義に生きる会津魂」と説明されても得心に至らない。「○○魂」で一束からげ、そこに安住するというのは集団への「依属」というものであろうと思うのである。

 <一ノ瀬俊也 『特攻隊員の現実(リアル)』(講談社現代新書、2020年)>:特攻は対戦車(刺突爆雷)、桜花、回天、震洋、航空特攻があるが、ここでは最もポピュラーな航空機による特攻のみを対象とし、「特攻隊員たちの頭のなかにあったものは何なのか」を、資料をもとにして批判的に述べている。特に真新しいと思える論述はない。
 まえがきから次を引用しておく。「これまでの特攻論は、特攻隊員たちの死の意義を、戦後の平和と繁栄の礎と説明してきた。あたかも彼らは降伏と復興、その後の経済成長を知り、そのために命を投げ出していったかのようである。しかし、いうまでもないことだが、特攻隊員たちは1945年8月15日の敗戦を知らずに亡くなっていった人びとである。つまり、彼らの頭のなかには降伏も繁栄も存在しない」。

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