2021年5月14日金曜日

続けて長谷川卓さんの小説

 鉱山関連の資料を読むこと、偶然にみつけた奥会津横田関連のwebの写真を食い入るように見つめること、オーディオ関連でPCドライバーのインストール状態を修復すること、アプリと音楽ファイルを整備すること、等々で本を開く時間がなくなり、2週間近くも毎日の読書時間は尠く、本を開いても頁がなかなか進まなかった。

 <長谷川卓 『嶽神伝 風花 (上)』(講談社文庫、2019年)>:小暮衆の無坂がメインである「嶽神伝」シリーズ全4巻の最終巻上巻。作者の長谷川さんは亡くなってしまった。
 「風花」上巻は無坂の近況、上杉や武田、家康の緊迫する状況と相互の戦い。山の者とは、住む娑婆は違うと家康は断じるが、「家」ファーストの家康の姿勢が、現コロナ禍の中での「○○ファースト」の政権を連想させる。○○は経済であり、五輪であり、もっと言えばつまらぬバカバカしい意地と置き換えても良かろう。「御家とか言う詰まらぬものを守るために、何人の命を取り、失ったのですか。いつからそのように浅ましいお考えを持つようになられたのですか。薬草を覚える度にお見せになっていた、あの笑みは忘れてしまわれたのですか」(409頁)と無坂は家康に言葉を突き刺す。この言葉は、社会に向き合うときの、作者の基本姿勢を代弁していると思う。まして今のこのコロナ禍のなかでは尚更に。

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