2021年5月21日金曜日

長谷川卓、最後の読書

 <長谷川卓 『嶽神伝 風花 (下)』(講談社文庫、2019年)>:甲州征伐を開始した織田信長によって1582年(天正10年)に高遠城は落城した。無坂はここで戦って一生を終える。77才であった。無坂の物語はこれで巻を閉じ、あとがきで「今後も山の者は書き継いでいく予定でいます」と言っていた著者は、本書刊行翌年に72歳で亡くなってしまった。

 <長谷川卓 『もののふ戦記 小者・半助の戦い』(ハルキ文庫、2017年)>:武田晴信(信玄)方の武将横田高松の下の下の下に雨宮家があり、当主は佐兵衛。そこの小者である半助が主人公。舞台は世に名高き「砥石崩れ」であり、横田軍は武田軍の殿となって敗走する。半助は佐兵衛を何としても味方のところまで連れ帰ろうとする。村上軍に追われ、野伏せりに襲われ、百姓に殺されそうになり、等々の修羅場をかいくぐり半助は、村上義清の義侠心もあってどうにか高窪城にたどり着く。
 読んでいて頁を閉じることができなくなり、結局は午前3時半まで読み続け了となった。
 長谷川卓さんの小説は次のように大別できる、即ち、捕り物・同心もの、剣豪もの、山の者たちを描くもの、である。これらに当て嵌まらないものは『死ニ方用意 小説 臼淵大尉』と今回読んだ小説である。その意味ではまさしく本の帯にある「著者の新境地!」であり、楽しめた。
 2006年5月に始って、著者の小説は『運を引き寄せた男 小説・徳川吉宗』(かんき出版, 1994年)-文庫本になっていない-を除いて全て読み、楽しませてもらった。前に書いたように亡くなってしまった。残念である。 .

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