2022年4月6日水曜日

『カチンの森』、『フィリピンBC級戦犯裁判』、漫画『チ。』

 土曜日(2日)、息子とその嫁さんであるNちゃんと飲む。最後まで飲んでいたのはオレとNちゃん。二人とも結構酔っ払う。翌日は風邪気味と二日酔い気味が入り交じり夕方になってやっと普段の体調に戻ってきた。

 <ヴィクトル・ザスラフスキー 『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』(みすず書房、2010年)>:政府権力者の捏造・隠蔽・沈黙、それらを取り巻く国の虚偽と権謀術策。過去・現在における権力者のあり方は普遍的に腐敗する、ということ。
 ポーランドがロシアを嫌悪し、会津が薩長を嫌う事由は相似する。カチンの森事件における初期の真相究明活動における報告をチャーチルやルーズベルトは表に出さなかった。どの国もあるいは人もその時に立つ位置で計算しながら左右を見たり中央に視線を向けたりする。 本書で示される写真を見てはやるせない気持ちになる。

 <永井均 『フィリピンBC級戦犯裁判』(講談社選書メチエ、2013年)>:一般的にキリノ大統領は自らが受けた悲劇と相俟って日本人戦犯への恩赦が美談として描かれることが多い。実際のところはどうだったのか、本書はフィリピンで行われたBC級戦犯裁判を詳細に論じる。フィリピン側の視座に基づく記述も多い。
 論述されるのは、フィリピン一般市民への日本軍人の暴虐と殺戮、そこに表出するフィリピン民衆の怒り。独立国家としてその存在を顕示しようとするフィリピン共和国と戦犯裁判。モンテンルパに代表される収容所における日本人戦犯者の状況、等々。そして、妻と3人の子を日本軍に殺されたキリノ大統領の思い、死刑の執行、恩赦まで大統領を取り巻く影響と恩赦までの経緯。そして戦犯者の帰国。
 最初の死刑-死刑には絞首刑と銃殺刑の二つがあり最初の死刑は絞首刑-は3人で、その中の一人の元陸軍大尉は無実であったといえる。次は一晩で14人の処刑。そして恩赦。 アメリカの日本重視によるフィリピンへの圧力、収容経費負担、等々による影響も大きく、”美談として語られる恩赦”が強調されることには抗いたい。政治絡みは複雑な要素が入り交じり、個人的国民的感情で断じられるはずもない。日本軍が残虐行為をしたことは,間違いないのだが、本書ではその残虐行為への-国・軍・兵士のいずれにおいても-責任の取り方に論を拡げていない。外交的にフィリピンへの謝罪は表明しているのだが、どうしてもそれは形だけの、フィリピンに収容されている日本人の帰国を要望するための儀礼的なものとしてしか感じられない。

 <魚豊 『チ。―地球の運動について― 第7集』(小学館、2022年)>:内容の濃い会話と物語。次回で最終集とか。
 お金を出して購入した初めての電子書籍となった。

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