今日で6日となる。市販の薬を飲んでいたが一向に良くならない、特にベッドの入っては断続的に咳き込むので睡眠不足、ボーっとした日が重なっている。さすがにこれはまずいと、かかりつけの内科(呼吸器内科)に行こうとするが、今日木曜には休診日。一般内科も診察する、家から数分の徒歩でいける医院に行くこととする。
本の買い取りを依頼し、古い本も多いのでwebで確認できる見積もり額の6割ぐらいが実際の引き取り額であろうと思っていた。が、予想に反して1万円を超えた査定額となった。
<永井義男 『秘剣の名医 十七』(コスミック・時代文庫)>:もうシリーズ17冊目になるのか。初刊が2018年だから1年当たり3冊と多作である。
沢村伊織は八丁堀に居を移し、土中に浅く埋められた男の白骨と、女の木乃伊化した遺体の探索から本編がスタートする。そのミステリーに重なって女が投身自殺したと思しき事件に展開し、新たな謎ときがすすむ。新しく女岡っ引きのお蝶が登場する。
<片山杜秀 『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(新潮選書、2012年)>:戦前思想の流れを追いかけるのはもうやめにしようかと思う。倦きてくるほどに詳しい訳ではない。しかし、類似した本を読めば、そこに通底している(戦前)日本の狂気を再確認し、新たな異なる視点を感じることはなくウンザリしてくるのである。
本書にて解説される中柴末純は初めて知った。そしてその思想が「玉砕こそが軍上層部による見事な作戦指導である」、「国民みんなが喜んで死ぬ。そんな国があってよいものか。しかし、これで「持てる国」も怖じけづく。「持たざる国」にも勝ち目が出る。「金よりも体をつかってなんとかやってゆく」態度が、「中柴によって究極的に推し進められた」、とあり、この人が東条英機のブレーンを務め、少将まで上り詰めている。
日本という國體に日本全体が浸潤され、世界に向かって攻め進み、拳を振り上げたことに事後的に正当化を捏ねくり、次には挙げた拳を維持するための理屈を築きあげる。どう考えても論理的には破綻している。
「持たざる国」が「持てる国」と戦うには、「短期決戦」「包囲殲滅戦」、「側面攻撃」等々であり、兵隊や兵器・武器が足りなくて当り前で、それで戦うのが日本であるとされ、従って日本軍の兵站戦略のないことにも繋がっている。その骨格は昭和三年頃に『統帥綱領』改訂で顕れ、後の歴史にとてつもない事態を招来してゆくようになった。
読み終わって簡単なこの読後感を書いているとため息が出てくる。異常な時代であったと。その血脈は地下深く現代にも流れている。
<三浦英之 『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』(集英社文庫、2017年/初刊2015年)>:1938年から1945年までに存在していた満州国の大学。五族協和を謳うが結局は傀儡政権国家における日本が統治する大学。優秀な学生が集まったのは事実であるがそれは偏に全額国費で給与まで支給されたからである。日本初の国際大学で五族協和を謳うが、板垣征四郎や石原莞爾、辻政信、平泉澄、東条英機等が設立に関与している一面を見るだけでこの大学ありようは想像がつく。入試も講義も日本語で、各民族の優秀な学者を教授陣に迎えるはずが実際は9割方は日本人。言論が自由で、自由闊達な議論を支わすのは日常的であった。国内での目にすることが出来なかった共産主義などの書物もあった。しかし、途中から(治安維持法施工あたりヵ)からは神道の教育もあり、朝は東方遥拝からはじまった。
傀儡国家に建設された大学の中身はどうであれ、本書に描かれているかつての学生たちの戦後は、波瀾万丈としか言い様がなく、そこにはかつての日本憲兵に翻弄される人たち、現中国政府の異常な監視体制下での沈黙、等々、各地で生きていたかつての建国大学生たちの一つ一つの人生ドラマがある。
そして民族に関係なく卒業生たちの結びつきが固いことに、それを築きあげる環境があったことに、新鮮な驚きがあった。