<赤松利市 『風致の島』(講談社文庫、2024年/初刊2020年)>:目を通した著者5冊目の小説となる。舞台はバリ島。暴力と歪んだ愛、欲望のはけ口が展開される。著者の描く異状世界の小説はこれでお了いにしよう。
<吉田裕 『日本人の戦争観 戦後史のなかの変容』(岩波現代文庫、2005年/初刊1995年)>:いままで本を読んで、あるいは実際に生きてきて身についた歴史観を再確認した内容である。1949年生まれの我が身とすればちょいと時期がずれている同時代史といったところである。敗戦後の”民主化”とされる流れは捩れていて、アメリカ一国の欲望に追従するしかなかった、否、追従する能力しかなかった日本の政治家たちという捉え方はより強く感じる。
<日野瑛太郎 『フェイク・マッスル』(講談社、2024年)>:70th江戸川乱歩賞受賞作。綾辻行人・有栖川有栖・辻村深月・湊かなえの評価が高く、東野圭吾の評価もそれに準ずるような高評価で、貫井徳郎は違った物差しで評価したとあり、真保裕一は「面白さが私にはわからなかった。ユーモアでは片づけがたい土台の脆弱さが目についたせいだ」とする。
全体的な軽さが好みではなく、呼んでいる途中で最後にはそれまでの物語のピースをはめ直すはずだとの予感もあった。もっとコミカルな味を加えれば面白さがあった思う。深夜に流す経費削減の安手の安易なミステリーという感じがつきまとった。要は選考委員が高評価するのだが、「面白さが私にはわからなった」。
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