2015年8月18日火曜日

小説、漫画

 <樋口有介 『笑う少年』>:3年前の『猿の悲しみ』に続く風町サエのシリーズ2作目。3年の隔たりはあるものの、主人公も息子聖也も年齢を重ねていない。そして書名が何を象徴しているのかピンと来ないのは前作と同様である。前作の「猿」はヒト全般に繋がるのではないかと推測できるのであるが、「笑う少年」については理解が及ばない。主人公が追いかける人物の過去の姿を表しているのか、あるいは「笑う少年」なる芸術的表現-例えば絵画とか人文社会学的研究書-があるのか、分からない。
 さてこの小説は、極端な言い方をすればストーリーは横に措き、樋口ワールドに浸って、主人公の台詞・独り言を楽しめればいいと思う。

 <昌原光一 『江戸の告白』>:江戸を舞台にして描かれる物語はシリアスなもの。12歳からの丁稚奉公を真面目に勤め、女房と娘をもつ気弱な髪結久蔵は「不承知」と言えない性癖をもつ。その久蔵は、髪結仲間で遠島になっている科人与三治の女房とふとしたはずみから密通をし、挙げ句の果てに殺してしまう。不義密通は死罪であり、殺したことが明らかになれば女房と娘を路頭に迷わしてしまう。女房は密通で死罪になって咎人の女房となることを避けようとし、与三治に久蔵を殺してくれと頼む。久蔵は裁きを受けようと名乗り出るが、自死として処理した役人は相手にしない。与三治の前で殺されることを久蔵は望み、与三次は久蔵を殺して生まれ変わらせる。幾十年か経て久蔵は辻説法をしている、「人は誰しも抗し切れぬ誘惑に誘われるもの。そんな時こそ心して・・・・躊躇わず・・・・言うべき一言は言わねばなりませぬ、それは『不承知』」と。かつての女房は娘に言う、「不安な気持ちはね、誰かに頼ってちゃ消せないものなんだよ」と。
 ノワール時代劇と帯にうたってあるが、前記の如く、気弱な人間の罪への戦き、恐れを描いて、「ノワール」は当てはまらない。
 昌原光一の漫画は3冊目だが-3冊しかでていない-、『まげもん』や『御誂 人情幕ノ内』に入っていないものや、それ以外の作品を(あれば)出版して欲しい。

 <岩谷テンホー 『完本みこすり半劇場』>:下ネタだけの4コマ漫画。こういう徹底したばからしさはそれなりに面白いし、発想に関心したり笑ったりする。田中圭一の漫画同様に家族内閲覧はできない。因みにオレは東スポを手に取ったことはない。