2016年4月9日土曜日

本2冊

 鎮痛薬を2日ほどのんだら踵の痛みは3、4日でなくなった。何だったのだろうか。まあ、これも年のせいというのだろうか。

 <佐高信・松元ヒロ 『安倍政権を笑い倒す』(角川新書、2015年)>:春日部-妙典-茅場町-仲御徒町-春日部と移動する中で拾い読み。「毒を持たないお笑い芸人は世間への迎合者である」と思っているオレに取って、この新書におけるお笑い芸人批判は的を射ている。
 「安部さんはどうして国会議員という職業に就いたんですか?」との小学校高学年か中学生かという年齢の子どもの質問に対し、「それはですね、私の父もこの仕事をやりました。私のおじいさんもこの仕事をやりました。だからこの職に就きました」と答えたそうな。へーっ、くだらない。
 東京オリンピック誘致での「おもてなし」は「表無し」=「裏ばかり」-混迷する東京オリンピック準備とそれに関連する困惑-例えばイベント会場不足、宿泊施設不足-に結びつく。
 「まさに」「全力で」「断固として」「しっかりと」「唯一の」「切れ目なく」・・・・、思考停止の決まり文句。会社勤めの頃、「徹底的に」「協業し」「問題を先取りして」などという言葉が指示する側からも、実務担当側からも出た常套句だった。
 二人とも太宰が好きらしいが、そこは「えっ」という思い。オレは太宰が嫌い。
 「自分の弱い部分をさらけ出せない人、隠して、虚飾のベールで蓋って、自分を実像より大きく見せたがる人は、自分でも気づかないうちに、自意識をどんどん肥大化させていく」、そりゃそうだ、いじりすぎると自意識は膨らんで硬直する、まるで何の如しなのだ。
 「I'm different」、「自分自身について、『私は違う』と感じることを思いつく限り書き出しなさい」。これって大事と思う。

 <樋口有介 『少女の時間』(東京創元社、2016年)>:柚木草平シリーズの11作目で、樋口有介の41冊目の本。作中、南の島に移住してしまおうとの台詞が何度か出てくるのだが、「冬の寒さと杉花粉から逃げるため」に移住した沖縄には今も住んでいるのだろうか。
 樋口有介さんの小説は多分すべて読んでいて、この小説も楽しめた。死んだ女子高生の野川亜彩子と殺された芦田香保梨の謎ときを巡って柚木には多くの美女が関わってくる。柚木の前借り管理者の編集者/小高直海、柚木のベッドで尻を出して寝ていた考古学者か社会学者の枝沢柑奈、ルール無視の刑事/吹石夕子、怖いほどに綺麗な女子高生/山代美早、その母親で娘と同じく美人で世間の一般常識から外れている山代千絵、これだけの名前を見れば数年後でもこの小説の雰囲気は思い出すであろう、多分。娘の加奈子、別居中の妻/知子、不倫の元上司で警視/吉島冴子はシリーズに共通して登場する。
 「古女房 たれた乳房(ちち)振る 除夜の鐘」。この笑える俳句を作った千絵の人物像から、19歳の頃のあるおっとりとした女性を思い出した。その女性は夫がおらず(理由は知らない)、中学生の女の子がいて、脳軟化症(当時はこう称していた)の母親がいて、私の友人(もちろん男)とその妹、そしてもう一人の間借り人をおいていた。ある日そのおっとりした女性は親切にも庭に面した廊下で友人と私にお茶を出してくれた。寿司屋で出されるような湯飲みを見ながら彼女は、「お人形さんが沢山描かれていて面白いので買ってきたの」と言う。しかし、その絵は性行為の体位のバリエーションを表したものであり、友人と私は言葉を返せずにいた。もしかしたらその後も他の人にあの湯飲みでお茶を出していたのかと想像すると複雑な思いがした。48年前の大学1年生のときだった。