2020年11月16日月曜日

文庫本2冊

 <連城三紀彦 『運命の八分休符』(創元推理文庫、2020年/初刊1983年)>:『幻影城』でデビューした頃から知っており、15冊ほどは読んでいて、最近の新聞での宣伝に懐かしさを覚えた。『戻り川心中』や『恋文』などの初期作品が記憶にあり、本書はそれらの「恋愛もの」とは異にするミステリーである。5編の連作短編に途中で倦きてきた。冴えない男に美女たち、彼女等に頼まれ謎を解くというパターンがつまらなくなってしまった。幾重にも張られた伏線、トリッキーな謎を鮮やかに解明する、という流れにも全く惹かれなくなっている。 

 <木皿泉 『さざなみのよる』(文春文庫、2020年/初刊2018年)>:43歳でナスミは癌で死んでしまった。ナスミを知る人たちは、彼女の死を知ってそれぞれに彼女を思い、彼等彼女等自身を振り返る。短い物語が幾重にも重ねられる。ナスミの人物像が今ひとつ腑に落ちてこない。第13話から違和感を覚える。ナスミの夫が再婚し、子供が出来て、その子が中心になり、第14話ではその子が63歳になっている。 
 文庫本の帯には「書店員が選ぶ、泣ける本第1位」とあるが、なぜ泣けるのか分からない。「私が死んだとき、私の姉やおばさんや友だちは私を思い出して優しく私の人生を包み込んで欲しい」、そう思うことで「なんだ、私、けっこういい人生だったじゃん」(本の帯の惹句)と感じ入ることができる、そう思っている人たちにはきっといい小説なのであろう。

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