2021年4月13日火曜日

日本史の新書と漫画『チ。』

 <大澤真幸 『日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか』(朝日新書、2016年)>:高校2年の時だったと思う。日本史の教師に質問をしたことがあった、なぜ天下を取った武士達は天皇/皇室一族を殺さなかったのか、と。教師からの回答はなかった、あるいはあったとしても記憶に残るスッキリとした内容ではなかった。その後目にしたよくあるパターンは、宗教的な祟りを怖れたとかいう類であるが、それで納得できるものではない。信長は多くの宗教者を殺したし、権力争いの中で勢力をもった宗教者や寺院を潰すのはよくあった史実である。明治になってからも仏教や新宗教は弾圧されている。ならば、天皇という存在は存在を消滅できない大きな力、天皇の力と言うよりも人間の社会生活の精神構造上の理由があるのだろうと思うことはごく自然なことである。しかし、中国では易姓革命があるが、それとは違って日本には万世一系の天皇が存在し、それは全世界のなかで無比の素晴らしいことである、などと信じ込むことは自分にはありえないことである。
 本書はそのすっきりしないことを解ったような気分にさせてくれる。気分にさせてくれる、という表現になってしまうことはまだ理解が不十分で、再読し、精読する必要があるということである。書名に「日本史」とあるけれど、その日本史を解くことにおいては、中国の易姓革命からキリストのことにまで論考は及ぶ。もっとも納得できることは「天皇なき天皇制」であって、このシステムは現代社会にもおよぶ日本社会の普遍的な体制、人間行動であって、ここをもっと深く確実に理解したい。これを基底に置けば、政官の動きも組織における人間の動きも、苛立ちなく監察できるであろう。

 <魚豊 『チ。―地球の運動について― 第1集』(小学館、2020年)>:天動説中心の時代における地動説探求の物語。まずはとっかかりを読んで面白いので続集を発注。

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