<弓月光 『瞬きのソーニャ③』(集英社、2020年)>:6年ぶりに読む続刊。「『ソーニャ』は完全に趣味。気晴らし」と著者が言うだけあって前巻から長い年月が経っているが、それにしても6年も間を空けるなんて空きすぎであろう。弓月光と言えば女性の艶かしい姿態を描く漫画で有名だが、それらの作品は手に取ったことがない。
1949年生まれの作者が描くカワイイ女の子のハードボイルド漫画を、同年に生れた男が楽しむというこの情景、少々照れくささもある。
<宮口幸治 『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない人たち2』(新潮新書、2021年)>: ADHDやASD、LDの診断障害がつけられず、知能障害でもない「境界知能」の人たちの生きづらさを前作で知り、結構衝撃的であった。本作では簡単に言えば、「頑張らない」ではなく、「頑張れない」人たちへの支援のあり方を論じている。人びとの置かれた環境は様々だし、自身の行動も千差万別だからこれが正解だとする策はない。しかし、人にはこう接しなさいという指針の内容は深く、考えさせられるし参考になる。
9日の朝日新聞「折々のことば」に載っていた言葉が意味深い-「貧しい言葉で豊かな明日を語るくらい、人びとをシラケさせるものはない。<天野祐吉>」。この言葉、人をネガティブにさせる言葉を単に豊かに深くせよ、と言っているのではなく、ネガティブにさせる自分自身の言葉、人を見つめる姿勢をきちんと考え、人の置かれた状況を理解した上で言葉を発せよ、と指摘していると解釈する。
本書の最後に書かれた言葉が重い。「”あの子、表情が悪いな”と思った時は、まずは”自分の顔はどうかな”と思うようになりました」。“あの子”を自分の身近にいる人に置き換えると、自分の生き様を客観視する言葉と思え次の言葉が浮かんでくる、すなわち、「過去と他人は変えられない。変えられるのは自分と未来」。
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