2021年10月29日金曜日

新車納入、江戸川乱歩賞受賞作

 車の減産が続いている中、新車購入の車(HONDA N-BOX)がやっと納車された。以前に比べて室内が広くなり、音が静かになり、スライド・ドアの開閉操作が軽くなり、安全面への対応が拡張された。いつになるのか判らないが運転免許返納までこの車に乗り続けることになる。
 納車2週間程前にガソリンを入れるときに満タンとしてしまった。その前には金額指定で入れたのにうっかりしていた。100kmも走らずにいて勿体なかった。このうっかり行為も年齢のせいであろう。

 <桃野雑派 『老虎残夢』(講談社、2021年)>:二人が受賞した第67回江戸川乱歩賞作品の一つ。物語の舞台は1200年頃の南宋。武侠小説であって密室(孤島の楼閣)殺人のミステリー。登場人物は男性3人と女性3人で、師である人物が謎の死に方をし、残った5人がそれぞれの経歴を露しながら謎解きをする。初めて読む類の小説世界が楽しめた。
 選者の一人である貫井徳郎が指摘するように伏線を強化、すなわち前段で物語を厚く深く拡げておけばもっともっと楽しめた気がする。中国が舞台であるから初めて目にする熟語が豊富に出てきて、それもまた楽しめた。
 著者名の雑派はフランク=ザッパに由来すると書かれており、このようなミステリーをものにする著者の生活観というか趣味というのか、興味を覚える。因にフランク=ザッパのCDは22年前に入手した1枚だけ持っていて(アルバム「Frank Zappa」)、初めて聴いたときはピンと来ず、以来棚に立っているだけとなっている。

 <伏尾美紀 『北緯43度のコールドケース』(講談社、2021年)>:もう一つの第67回江戸川乱歩賞受賞作。主人公はオーバードクターで30歳のときに北海道警察に入った長身細身の沢村依理子。警察組織内部における権謀術数と軋轢、沢村個人の蹉跌や父や妹との関係、署内における人間関係が重しのようにのし掛かり、その中で未解決殺人事件を追う。
 選者たちの評価は概ね事件の謎ときや解決については好評価されるが、小説としての構成については問題とされている。ある選者は「候補作中、一番小説が下手でした」とまで評している。本書刊行までかなり手を加えたのかもしれない。逆に、読んでいて読みにくいとかは全く感じなかったが、事件解決に至るまでの捜査があっさりと進み、その捜査が中心となる段になって急に違和感を感じた。過去の捜査プロセスがいかにも緩く、主人公が執念深く追うと次々と事件の全容が明らかになるのはいくら何でも安易ではないかと思った。そんな感を抱いたが物語の伏線や人間関係、気配りなどなどは深く描けていて夜更かししながら頁を捲った。
 自分の好きな曲を主人公が聴くシーンが3カ所出てくる。ドヴォルザークの交響曲第8番、指揮はアバド、ベルリンフィルとのライブであろうが、ドヴォ8はジョージ=セルとクリーブランドではないのかと思った次第。セル以外にケルテスやノイマンでもいいのであるが、アバドと結びつけた作者との好みにすれ違いを覚えた。
 次は主人公が院生のときに恋人が自死し、その時に流れていたシベリウスのヴァイオリン協奏曲で、アイザック・スターンとオーマンディ・フィラディルフィアと描いてあると嬉しかったのが、演奏者・指揮者の記述はない。
 そしてラフマニノフのピアノ・コンチェルト第2番、演奏はアシュケナージ(指揮はプレヴィンでオーケストラはLSOに違いない)。文字を追いかけている中で、アシュケナージがピアノを演奏しているLPのジャケットが頭の中に映し出された。

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