2021年11月12日金曜日

本3冊

 <小山聡子 『もののけの日本史』(中公新書、2020年)>:歴史の中での思考様式の変容というものを期待したのであったが、本書では豊富な史料にモノノケ/死霊/幽霊/怨霊/妖怪がどう描かれているのかを詳細に調査研究したうえで、乱暴に言えばその事例を述べているだけ、といった感が強い。なぜにそのように捉えていたのか、その捉え方はどこに根差しているのか、時代によってなぜ変化したのか、その変化のなかでの普遍性はどのようなものなのか、等々に言及されることはない。その点もやもやした思いを抱いた。尢も、日本人の死生観などは方程式のように表されるものであるはずもないが。

 <保阪正康 『陰謀の日本近現代史』(朝日新書、2021年)>:人々の興味を引くであろうと安直に付けられた書名は好きではなく、本書にはもっと別な落ち着いたタイトルはないのかと思った。・・・それは横に措いて、テレビの「関口宏のもう一度!近現代史」で語る保坂の的確な解説やコメントにはいつも首肯し、本書でも歴史の新しい側面を勉強することができた。
 東條をはじめ旧日本軍の愚かさは充分に理解できているのだが、何故にそうなってしまったのか、その本質的な部分はまだ自分は説明できるだけの知識を持っていない。本書を含め、他の歴史書などでも指摘されるように、陸大などでの成績至上主義、閉鎖的な知識培養等々は分かるのであるが、理解不十分な点は、何故そのようになってしまったのか、なってしまっているのかという、いわば日本の中にずっしりと根を張っている基層にあたる部分の理解である。

 <今尾恵介 『地図で読む戦争の時代 描かれた日本、描かれなかった日本』(白水社、2011年)>:第二次大戦における国内外の地図(中心は日本)、そこに描かれていることから想像を巡らす、あるいは複数の地図を比較対照して変遷していることに思いを馳せる、そういうことには楽しめる本である。が、トピック集といった装いに興味が深まることはなかった。地図を描く過程、編集行為における人(組織)の動きなどを知るには物足りない。
 地図に描かれているポイントを文章ではなく、丸で囲むとか矢印を付すとか、あるいはカラーで表示するとかがあればもっと楽しめることができる。

0 件のコメント: