2023年5月25日木曜日

媚びず僭らず・・・・・、諺、文庫本

 あることを話題の中心において友人たちとメールのやりとりをしていた。そこに書かれていた一人の言葉がいい。「今俺は猫のように生きていければと思っている。媚びず、背伸びせずマイペース。人とは適度な距離でゆったりゆったり歩んでいければなんて、人生いろいろですよ」と。
 そう、媚びず、僭らず、知らないことには慣れるようにしても狎れずに、身近な人には利他的であり、自立を基本において常に自律的であろうと思う。

 <金井真紀 『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った』(岩波書店、2022年)>:どこかで見たことのあるイラストと思っていたら、『世界ことわざ比較辞典』(岩波書店)のイラストを描いている人と本書の著者は同じだった。同じ岩波書店の、先日目を通した『解きたくなる数学』と同様に、写真とイラストの違いはあるにしても内容(本文)よりもそれらの装飾が豪華で随分と割高となっている一冊である。
 書名となっているフィンランドの諺は「意外なところに道がある。解決策はひとつではない」の意味。気に入ったものを幾つかメモする。「慶良間は見えるが、まつ毛は見えない」(沖縄)、「良いことをしたら水に流せ」(善行の見返りを求めるな、アルメニア)、「面と向かって緑色のことを言う」(思っていることを率直に言う、ルーマニア)、「よく食べ、しっかり糞をすれば、死は恐るるに足らず」(スペイン)、等々。・・・前記の『世界ことわざ比較辞典』を暇に任せて時々は開き、諺の意味の深さをはかってみたり、国の違いによる文化の表皮をなでてみようかと。

 <千野隆司 『鉞ばばあと孫娘貸金始末』(集英社文庫、2023年)>:面白いのだけれど今ひとつ物足りない。かつては美人だったらしく、謎ときの頭がさえていて、自分の稼業に基準を設けているお絹(鉞ばばあ)と、好奇心旺盛で看板書きの技術を持ち、可愛げのあるお鈴(孫)のキャラクターに具体的イメージがくっきりと頭に浮かんでこない。今は読まなくなったが鈴木英治の小説を読んだときには登場する女性が魅力的でそれなりのイメージを描いていたが、本書ではそれが不足している。登場人物全体にそういえる。多分に細かい所作・仕種の描写が欠けているのだろう。例えば、お絹が鉞を磨くときにちょいと自分の顔を写して利息取立の意欲を出すとともに昔の若かった頃の自分を思い出すとか、そんなことをさり気なく書けば少しでも小説の中へ誘われるのではなかろうか。だから、読んでいて台本のト書きを読んでいるような気分になるときがあった。筆力とはそういう描写力のことなのでもあろう。

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