2019年2月3日日曜日

本とマンガ、各1冊

 <武田一義 『ペリリュー 6』(白泉社、2019年)>:「ペリリュー島が玉砕したのは昭和19年11月24日」、「玉砕」と書かずに「全滅」or「壊滅」と書いて欲しい。マンガという性質上、ペリリューの悲惨さが淡くなっていることはしようがないか。
 23歳の時、友人と飲み屋さんで飲んでいて、「敗戦直後にはいろんな可能性があったのに、ただ悲惨さや窮乏を歎き、過去に対する内省が少なかった」というようなことを口に出したら、「お前らはあの終戦直後の惨めさを知らないからそんなことを軽く言うんだ」と隣で独酌していた40代と思しき男性が突如怒って言い放ってきた。「だからその大変さを語ると同時に過去への、戦争を起こしたことへの恨み辛みも口にして、その上での現実も語れよ」と反発する気持ちも生ぜず、それ以上続くことはなかったが、今でも富山市でのその時の情景が思い出される。1972年の夏の夜だった。

 <真藤順丈 『宝島』(講談社、2018年)>:「このミス」の5位、「週刊文春ミステリー」の7位、「山田風太郎賞」受賞、そして「直木賞」受賞作、540頁ほどの長編。表紙には「宝島」と並記して「HERO's ISLAND」とある。HEROとは戦果アギヤーのヒーロー、オンちゃん。親友のグスク、オンちゃんの弟のレイ、そしてマヤコことヤマコが、戦後の沖縄でアメリカ(軍)や日本(人)と向き合いながら(翻弄されながら)激しく生きていく。舞台はコザや那覇、悪石島も出てくる。スピーディーで政治的で暴力的で、そして沖縄での理不尽さ。物語に引き込まれて読んだ。惜しむらくは、ヤマコやサチコ(グスクの妻で元婦警)、レイの個人に争点を当て、彼ら彼女らの苦悩や悲しみ、喜び、怒りを一人称で語ってほしかった。そうすればもっと厚い小説になって、深さも増すと感じた。例えば、ヤマコがAサインバーで働きながら教員免許をとるまでのムキになる姿、サチコがグスクに冷たく接する意味と沖縄への思い、レイの兄への劣等感と畏敬などである。
 日米に虐げられた(ている)歴史と人びとの思いを手っ取り早く知るにはこの小説を読むといい。娯楽小説であるから物足りなさ、表層的描写にもどかしさは感じるが、傑作であると思う。

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