2020年2月9日日曜日

セイタカアワダチ草、『熱源』

 今季の芥川賞は古川真人さんの「背高泡立草」となった。この作品名を見て頭に浮かんだのは、十朱幸代さんが歌う「セイタカアワダチ草」。今から43年前、1977年の歌だから十朱さんが34-5歳ごろ。奇麗な声で歌っていてもっと知られていても良いと思うのだが。

 <川越宗一 『熱源』(文藝春秋、2019年)>:直木賞受賞作で、一時は品切れにもなって手に入れるのに日にちを要した。それ以外には何の予備知識もなく読み始め、時間的にも空間的にも人間社会的にも壮大な舞台なのであるが、何というのだろうか、箇条書き的で深みがなく、エピソードの寄せ集めによる連鎖という感が強かった。改行の多い文章にもそれが表れていると思う。読み終わる頃になって本書が、史実に基づく小説であることを知り、史実を小説にする難しさと安易さの両方が混じり合っていると思った。穿った見方ではあろうが、史料に書かれていることをうまくつなごうとしたのではないかと思ってしまう。本書のように一冊にまとめるのではなく、もっと細部にまで描写し、数巻にわたって大長編にして編んだ方が良いのではないだろうか。本書ではダイジェスト版を読んで安易に済ませてしまったという感がある。
 ここに描かれている物語に深く入り込もうとするには、巻末にあげられている参考文献を読むのが一番よく、その上で自分が受け止める世界を築くことだろう。
 ポーランドについては、通信教育に励んでいた頃に興味を持ち、『ケンブリッジ版世界各国史 ポーランドの歴史』(創土社)を読んでいたので朧げに知っていた。ビウスツキの独裁政治も微かに記憶に残っていた。一方、アイヌについては一般的なことがらしか知らない。樺太アイヌについては何も知らないに等しい。知らないことが多すぎる。
 ヤヨマネクフ(山辺安之助)・シシラトカ(花守信吉)・千徳太郎治・バフンケ・チュフサンマ・ブロニスワフ=ピウスツキ・ユゼフ=ピウスツキたちはwikipediaでも知ることが出来る。金田一京助・白瀬矗・大隈重信等々、歴史上の人物はほかにも登場する。

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