2020年3月18日水曜日

誤発注、本2冊

 貯まっていたポイントを利用して発注した本が4冊届いた。開梱して確認したら1冊は既に読んでいた本であることにすぐに気がついた。またしてもやってしまった。古本屋に売るにしても750ポイント(750円)が無駄になってしまった。アルコールが入っているときに発注行為はするものではない。

 <桐野夏生 『夜の谷を行く』(文春文庫、2020年/初刊2017年)>:1971~1972年にかけての連合赤軍山岳ベース事件は就職を控えた大学4年の時のことで、メンバー29人中12人が私刑を受けて事実上殺された。森が公判前に自死し、永田洋子は東日本大震災のあった2011年に獄死した。2月4日に11番目のメンバーが胎児と共に死亡し、その二日後に本書の主人公/西田啓子が迦葉ベースを脱走する。
 連合赤軍の幹部や死亡者は実名で載っているが、脱走した西田や、永田死亡後に会うかつての同士たちはあくまで小説上の人物であり、どこまでが事実に基づいて描かれているのかは分からない。西田が妊娠3ヶ月でベースに入り、獄中で出産し、元夫がホームレスになり、彼が福島原発事故後のボランティア先で死亡し、生き残ったメンバーに対し真摯にフォローするルポ・ライターが西田の子であることを末尾に描くのは、いかにも小説という趣であり、多少の興ざめを感じ、どこかでノンフィクション的な一冊として向き合っていた自分に対し、本書は小説であると改めて思い直した次第。
 映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝二監督、2008年)のシーンがいろいろと頭に浮かぶ。

 <樋口有介 『礼儀正しい空き巣の死』(詳伝社、2020年)>:1988年に樋口さんの小説に嵌まってから本作で32年、47冊目となる。主人公は『平凡な革命家の食卓』で登場した卯月枝衣子警部補で舞台は国分寺。温泉旅行から帰ってきたら風呂場で「礼儀正しい空き巣」が死んでいた。事件現場の隣は空き地になっているがそこでは30年前に10歳の小学生女子が浴室で殺され、犯人不明のままであった。そして国分寺では4ヶ月前から3件の連続強制性交事件の捜査が続けられていた。女性週刊誌記者・卯月の恋人である短大講師が警察外で卯月に接し、国分寺署内では刑事課長・生活安全課長・刑事課班長が同じく班長でもある卯月に絡む。最後は3つの事件とも見事に解決し、前作から年齢を重ねていない卯月警部補は念願の捜査一課への転属が決まる。
 樋口さんの小説としては366頁の長い長編で、柚木シリーズに描かれる内容に少し触れられる箇所があり、作者の遊び心が味わえる。楽しめた。

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