2022年6月29日水曜日

アンプ、『彼女が最後に見たものは』

 熱い。あまり外に出ることもない日々を過ごしているので、この猛暑を肌で感じたのは、猛暑を記録した翌日か翌々日。午後になるとエアコンはつけっぱなし。

 20年近く前に購入してまだチャンと動く、小さなモニターアンプYAMAHA AA5にEWIを接続してみたが音質が良くない。このギターアンプとEWIは相性が良くないようである。他のアンプには不満は感じないのだがいかんせん大きいので持ち運びが面倒、というわけでRolandのMOBILE CUBEを買ってしまった。電源アダプターとケースも付いているのでサウンドハウスから購入。キーボード接続にも対応しており、したがってEWI接続にも適しており、なんと言っても小さく、扱いやすい。使う機会がめっきり減ってしまったカメラの三脚にこのアンプを取付けてEWIの橫に立てている。・・・また物が増えてしまった。

 これもまた購入して20年近くになろうか、BOSSのギター・マルチエフェクターME-20とベース用のME-20Bが遊んでいたので、久しぶりに身近に引っ張り出してギターやEWIと接続してみている。使い方をすっかり忘れていたのでマニュアルを読むことから始まった。EWIとの接続はME-20Bも楽しめそうである。EWIでは選択するプログラムによって音質は大きく変わるので遊べる。またギター・エフェクターとして最初に購入したYAMAHA MagicstompもEWIで試してみたが、好みではなかった。古いものなのにまだ動くのが嬉しくもある。
 演奏スキルは一向に上達しないなか、関連機器と接続して遊ぶことに躊躇もするが、これは自分の性癖であるので仕様がなかろう。

 <まさきとしか 『彼女が最後に見たものは』(小学館文庫、2021年)>:作家は1965年生まれの女性、札幌に在住。
 三ツ矢と田所の両刑事のシリーズ2冊目。著者の本を読むのも同じく2冊目。ホームレスの56歳の女性、不倫を続ける女性とそのモラハラ夫、その両親から距離をとる高校生の娘、連帯保証人をしていた社長に逃げられトラック運転手になった男性と虚栄心の強いその妻と引きこもりの息子、社長の息子たち、以上が主要登場人物。彼らが相互に絡み合い、ともあれ自分の人生に不満を抱き、その出口を求め彷徨う。が、何かを見つけ出そうという訳ではなく、不満をどうやって解消するか、何かで糊塗するか、と自分の目先をかき回している。人の身勝手さと欲望、そこに起因する不満、安易な解消。比較的まともなのはホームレスとなってしまった女性のような気がする、しかし共感も同情はない。
 家族の崩壊は、単に愚かな身勝手な人たちを絡み合わせるのではなく、そこにいたる個々の人間のもっと深い心象に触れなければ小説自体に深さは描かれない。逆に言えば、個々の人物の描き方がステロタイプで表層的あると感じた。 シリーズが続いてももう読まない。但し、三ツ矢刑事の過去の事件を解き明かす巻になったら読むかもしれない。

2022年6月24日金曜日

エアコン、弁理士が書いた弁理士が主人公のミステリー

 エアコンを使い始めた。夕方になって汗ばんできて、さらに蒸してくるとベタベタする感覚が嫌でたまらず、シャワーを浴びて、温度は高めにして静かにエアコンを稼働する。自室に戻ってからも部屋を締め切って明け方までエアコンはほぼ運転しっぱなし。以前は5月初旬でもう運転していたので、それに比べれば随分と時期がずれた。これは天候のせいなのか、否、年齢のせいなのか、両者が合さっているのか。

 <南原詠 『特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来』(宝島社、2022年)>:2022年第20回「このミス大賞」受賞作。主人公は弁理士、VTuberを舞台に特許の侵害をめぐる今までにないミステリー。
 個人的には、かつて企業に採用されるときに特許権譲渡契約を提出した経験があるし-出願した実用新案・特許は10件前後だったか-、知的財産権侵害の他社製品調査も何回かやっていたし、製品開発時には他社への侵害有無調査は必ず実施していた。かなりの時間をかけて調査し苦痛でもあった。他社出願の無効調査も経験しているし、会社内で他社とのクロスライセンスを耳にすることも珍しいことではなかった。だから、ここに描かれる特許をめぐる展開には面白く飛び込めた。しかし、VTuberなる言葉は初めて知ったので、その世界を想像するに時間がかかったし今もその世界を知ったとはいえない。
 3Dスキャナーと点群データ処理、それに特許を絡ませるミステリーは新しいミステリーであり。楽しめたのではあるが、いかんせん登場人物のキャラクターがいかにも安直で、輪郭は明確なのだが中身が透けて見えるオモチャのような設定と描写になっている。名前の売れたタレントをただ賑やかに動かしているという、最近よくある安直なテレビドラマのキャスティングの感じがする。
 作者は東工大院出身の弁理士。親しい友人の一人に同大学出身の弁理士がいる。その友人は本書を読んだらどのような感想を抱くのであろうか。 医者の作家、弁護士の作家、新聞記者の作家、エンジニア出身の作家など専門職に携った(ている)人が作家に名を連ねているが、現役弁理士の作家は初めて知った。

2022年6月21日火曜日

アマゾン、『秘剣の名医』、『あの日、君は何をした』

 『ヤノマミ ~奥アマゾン・原初の森に生きる~』のDVDを見た。ヤノマミについては本も読んでおり、映像も過去に見ているので改めて振り返ってこのアマゾン奥地に住む村の生・性・子供の誕生と死、狩り・遊びに自由さを思う。ディレクター(国分拓)へのインタビューがあり、放映されたヤノマミの世界に深みを加える。

 <永井義男 『秘剣の名医〈11〉蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2022年)>:今回は浅草の切見世(岡場所)で女が続けて殺される。篆書で彫られた印形。伊織は湯島に引っ越し、そこを訪れた仕出料理屋の16歳の娘と婚姻することとなって巻が閉じる。
 文章を書くと読点の打ち方で考えることがままある。永井さんの小説はよく読んでいるのであるが、今回は何故かこの読点の打ち方が勉強になった。

 <永井義男 『秘剣の名医〈12〉蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2022年)>:立ったままに店主の母親が死に、そこに白鼠と壺がトリックとして使われた。死亡時刻の異なる心中では殺人と言い張り冤罪も生じさせようともする親たちの陰謀を暴き、親たちは子の葬儀も行えず死骸取捨、葬式禁止の苦汁を舐めることとなる。長屋で白骨が発見され身元の探索が行われる。悪人はその所業が白日の下に露され、己の道を正しく歩まんとする人たちは日々を大切に過ごしている。伊織と結婚したお繁と下女のお熊が愛らしく好ましい。欲を言えばもうちょっと二人の描写があってもいいかなと思う。素直に明るく毎日をおくる若い女性はそれだけで柔らかい弾みある一つの物語を想わせる。

 <まさきとしか 『あの日、君は何をした』(小学館文庫、2020年)>:ミステリー文庫本。主人公は三ツ矢刑事、彼とコンビを組まされた田所刑事。三ツ矢は中2で母親を殺され、彼女が交際し、三ツ矢との関係が良好だった男が犯人と目され、彼の縊死した遺体を三ツ矢が発見。以後三ツ矢は真実は判明していないと考えている。瞬間記憶能力を持つ三ツ矢は刑事になる。この謎解きがこの小説のメインではなく、これは三ツ矢刑事のキャラクターを形作り、多分シリーズ化する物語を貫くテーマとなろう。
 本小説のメインストーリーは、15年前に警察官の前から逃げて少年が事故死するところから始る。15年後に不倫相手の女性が殺され、男の消息不明となる。男との仲が冷めていた妻は夫の帰りをただ待つ。15年前に死んだ少年の母親は子供の死で狂気を帯びた言動をするようになる。三ツ矢刑事は現在の事件を捜査するとともに、15年前に少年はなぜ警察官から逃げたのか、それも追い求める。失踪した男の母親の狂気、15年前に死んだ少年の母親の狂気。それらが入り交じり物語は解決へとすすむ。
 質問にキチンと答えない相手に、尋ねていることはこうです、と棘を刺すように発する三ツ矢刑事の言葉が楽しめる。かといってこの小説は存分に楽しめるというわけではない。二人の母親の狂気が余りにも異常でそれを物語に骨格に据えることは好みではない。また、瞬間記憶能力という特殊設定も好きではない。
 読んでいて、三ツ矢刑事が、何の脈絡もなく俳優の安田顕に重なった。シリーズ第2作も読むことになるかもしれないが、今は積んである未読の方がかなりあるので手を出すまいとしている。散歩がてらに書店に行ったら買ってしまうかもしれない――と書いた翌日買ってきてしまった。

2022年6月10日金曜日

梅雨入り、ウスラウメ、『アメリカ紀行』、『ノモレ』

 梅雨入りした。庭の小さな花壇の紫陽花が一輪だけ咲いている。その橫ではウスラウメの赤い小さな実が緑の葉に隠れるように沢山なった。2回に分けて実を採って果実酒を作った。どういう味になるのか楽しみ。果実酒は、今まで失敗も繰り返したので期待を膨らませずに熟すのを待つこととする。

 <千葉雅也 『アメリカ紀行』(文春文庫、2022年/初刊2019年)>:哲学者の著す紀行とはどんなものなのかと思って頁を開いたが、大きく記憶に残ったのは次の2点。一つは日本では非常に稀薄とされる「二人称」の会話、例えば「How are you ? Have a good day. You too!」の日常的多用。空模様を多用する日本人の挨拶、二人称多用のアメリカ人、何となく納得する。大阪での「もうかりまっか? ぼちぼちでんな、あんたはんは?」が二人称に近いか。「ご苦労様、お疲れ様、お先に」は相手に向かっている言葉なのか自分に話しているのか人称が曖昧という感じである。
 もう一つは著者愛飲のバーボン・ウィスキーWOODFORD RESERVE。どのようなウィスキーなのかと買い求めた。近くの“やまや”にはDOUBLE OAKEDしかなかったのでそれを購入。ついでに好きなFour Rosesのちょっと価格が上のスモールバッチも併せて買った。前者は少し甘いまろやかな感覚があり、後者はそれに比べて辛目の刺激的な味わいがある。初めて舌に乗せたWOODFORD RESERVE DOUBLE OAKEDはバーボンという今まで抱いていたイメージの枠外にあり好きなウィスキーとなった。空になったらまた買おう。

 <国分拓 『ノモレ』(新潮文庫、2022年/初刊2018年)>:未知の先住民イゾラドとの接触。本書の主人公は教育を受けたペルー・アマゾンのイネ族ロメウ。彼が接触をするイゾラドは100年前に別れたイネ族の仲間-ノモレ-ではないのか、結論はでないままに現在も交流は続く。
 写真は2枚だけしか載っていないが、ちょっとしたものはウェブで見ることができる。前に読んだ『ヤノマミ』でもそうであったが、交流のない彼らを知ろうとすることにどのような意味があるのだろうかと疑問も感じる。そして多分、いまでも奥地では資源を求めて森の奥に入り込む”文明人”たちによって彼らは生活・生命を失い続けているのだろう。あらゆる側面での欲望が人間を残酷にし、その欲望を満たす者がいれば、欲望と天秤にかけたように生命や生活を失う人たちがいる。
 映像を見たくなり、『イゾラド ~森の果て 未知の人々~』と『ヤノマミ ~奥アマゾン・原初の森に生きる~』のNHK DVDを2点発注。

2022年6月5日日曜日

ONKYO、サン=ジョルジュ

 焼酎で酔っている状態の続き。 

 ONKYOが破産した。大学を卒業して就職した頃に富山市のオーディオ販売店で買い求めた人生最初のコンポーネント・アンプがONKYO Integra 725であった。当時はかなり高評価のアンプであって、ケーブル接続が背面ではなく上部からできるのが特徴的だった。ちなみに同時に購入したのがプレーヤーPL-25EとスピーカーDIATONE DS-251-今から丁度50年前のことで両者とも奇跡的に(!?)まだちゃんと動作する。同時期に購入したTEACのオープンリールデッキ(A-2300だったか?)はとうの昔に廃棄した。オーディオ・ラックも尞の部屋に置き、月賦とはいえ初任給52,000円の時代によくもまあ揃えたものではある。

 サン=ジョルジュのアルバムを二つ続けてe-onkyoより購入した。この作曲家は砂川しげひささんの文庫本で知り、NAXOSのアルバムで聞いてはいたが「ヴェルサイユ宮殿、小トリアノン宮における王妃マリー・アントワネットのための音楽会」の中にある演奏で尚更に好きになり、今回は高音質の二つのアルバムをよく利用するe-onkyoからDL購入。
 プランテーション地主と奴隷との間に生れ、1700年代に音楽を学び、差別にあったこの人の人生を知りたくなる。「黒いモーツァルト」とも呼ばれるらしいがそう呼ぶこと自体が差別的である。

ELENI

 以下、ごま焼酎を飲みながら書いている。

 ELENIなる曲を知った経緯は覚えていない。YouTubeで何かを捜していてたまたま知ったに過ぎないが、そのたまたまの経緯が記憶にない。TOL & TOLなる兄弟デュオの奏でるイントロのメロディに惹かれ、イントロの後に続くボーカルをカットした楽器演奏だけのスコアを捜した。捜しているなかでこのELENIの動画は幾つか見つかるがさほどポピュラーではないようでなかなか目的のものは見つからない。
 捜している中で映画のELENIを知った。邦題は「哀愁のエレーニ」で1985年公開なのだがこの映画のことは何も知らなかった。ならばELENIなる曲はこの映画のテーマ音楽なのかと思ったがどうも違う。調べているうちに映画はギリシャとアメリカの合作であり、冒頭のELENIはギリシャの歌手・作曲家Demis Roussosの作った曲であることも判った。ギリシャではELENIという名に何か込められた意味があるのかもしれない。
 TOL & TOLはオランダ出身の兄弟で、またELENIを歌う(著名であるらしい)Andrea Jürgensはドイツの歌手。YouTubeでELENIを検索するといくつかの異なる曲がヒットする。しかし、Demis Roussos作曲のELENIのスコアを探すも見つからない。イントロだけの短いフレーズだけでもいいと思っていたら、MuseScoreで“Andrea Jurgens - Eleni Heiss Das Madchen”が見つかった。オーボエやヴィブラフォンなどの器楽曲としてスコアが作られているし、音を出すと無味乾燥な音質であることが多いMuseScoreなのだが意外にも奇麗である。例によって無料でのDLはできない。いつもの手口で動画を録画し、それを静止画に取り込み、画像を貼り付けて楽譜としそれを参照にMuseScoreで主旋律のスコアを作る。イントロと間奏はオーボエ、主旋律はヴィブラフォンなのでそれを繋ぎ合わせて(少しアレンジも加えて)単曲とする。EWIで演奏する際はオーボエ部分とヴィブラフォン部分でオクターブを変えたりすれば少しは退屈でなくなるかもしれない。ゆっくりした曲だし、#とbも複雑ではないのでそこそこ吹けるようにはなる(だろう)。
 二つの楽器演奏を繋げて単曲にするのはFoyle’s War Theme Songで五重奏からオーボエのパートとフルートのパートを繋げたのと同じやり方。楽器すべてを含んだ楽譜からバッキングも作れるが、そこまでの気力は(今のところは)ない。せめてEWI一本で情感を込めて吹けるようになりたい。

2022年6月3日金曜日

「月亮代表我的心」、雹

 2日、NHK「映像の世紀バタフライエフェクト」にて「我が心のテレサ・テン」 の録画を見た。テレサ・テンの歌を好んで聴くことはないのだが、放映の中で歌っていた曲「月亮代表我的心」(月が私の心を映している/The Moon Represents My Heart)のメロディに惹かれた。
 無料の楽譜を探し、ピアノ版のものを見つけたが短い演奏にアレンジされている。やりたいことはテレサ・テン(鄧麗君)の歌うキーで短縮しないスコアを作ること。先ずはピアノ・ソロにアレンジされたC調の演奏の楽譜付きYouTube動画をDLし、それから静止画をキャプチャーし、それを参照にmusescoreでメロディ譜を作る。そしてテレサ・テンの歌を聴きながら修正を加える。EWIでの演奏がしやすいようにG調にて楽譜は完成。EWIではGにトランスポーズするとテレサ・テンのキーと合致する。
 PCとオーディオ・インターフェース(AG06)を使用し、彼女の歌う曲と自分の吹くEWIの音とミックスさせてヘッドホンで練習する。前奏も間奏も歌唱部もすべてEWIで鳴らすのでつまらないと言えばつまらないが、そこはテレサ・テンになりきった気持ちで(?)メロディを奏でるように練習。この曲は同じフレーズが繰り返され、複雑な変化もなく覚えやすい。単調で綺麗なメロディ。

 3日午後に激しい雨と雹。娘の駐車場には屋根がないので彼女はこちらに避難し来て降りが止むまで車の中で待機していた。小降りになって外に出たときにベランダにあった雹を手に取ると綺麗な透明な大粒の氷であり、グラスに入れてオンザロックに使えそうだとふと思う。近くの中学校で硝子窓が割れたらしい。