2022年6月21日火曜日

アマゾン、『秘剣の名医』、『あの日、君は何をした』

 『ヤノマミ ~奥アマゾン・原初の森に生きる~』のDVDを見た。ヤノマミについては本も読んでおり、映像も過去に見ているので改めて振り返ってこのアマゾン奥地に住む村の生・性・子供の誕生と死、狩り・遊びに自由さを思う。ディレクター(国分拓)へのインタビューがあり、放映されたヤノマミの世界に深みを加える。

 <永井義男 『秘剣の名医〈11〉蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2022年)>:今回は浅草の切見世(岡場所)で女が続けて殺される。篆書で彫られた印形。伊織は湯島に引っ越し、そこを訪れた仕出料理屋の16歳の娘と婚姻することとなって巻が閉じる。
 文章を書くと読点の打ち方で考えることがままある。永井さんの小説はよく読んでいるのであるが、今回は何故かこの読点の打ち方が勉強になった。

 <永井義男 『秘剣の名医〈12〉蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2022年)>:立ったままに店主の母親が死に、そこに白鼠と壺がトリックとして使われた。死亡時刻の異なる心中では殺人と言い張り冤罪も生じさせようともする親たちの陰謀を暴き、親たちは子の葬儀も行えず死骸取捨、葬式禁止の苦汁を舐めることとなる。長屋で白骨が発見され身元の探索が行われる。悪人はその所業が白日の下に露され、己の道を正しく歩まんとする人たちは日々を大切に過ごしている。伊織と結婚したお繁と下女のお熊が愛らしく好ましい。欲を言えばもうちょっと二人の描写があってもいいかなと思う。素直に明るく毎日をおくる若い女性はそれだけで柔らかい弾みある一つの物語を想わせる。

 <まさきとしか 『あの日、君は何をした』(小学館文庫、2020年)>:ミステリー文庫本。主人公は三ツ矢刑事、彼とコンビを組まされた田所刑事。三ツ矢は中2で母親を殺され、彼女が交際し、三ツ矢との関係が良好だった男が犯人と目され、彼の縊死した遺体を三ツ矢が発見。以後三ツ矢は真実は判明していないと考えている。瞬間記憶能力を持つ三ツ矢は刑事になる。この謎解きがこの小説のメインではなく、これは三ツ矢刑事のキャラクターを形作り、多分シリーズ化する物語を貫くテーマとなろう。
 本小説のメインストーリーは、15年前に警察官の前から逃げて少年が事故死するところから始る。15年後に不倫相手の女性が殺され、男の消息不明となる。男との仲が冷めていた妻は夫の帰りをただ待つ。15年前に死んだ少年の母親は子供の死で狂気を帯びた言動をするようになる。三ツ矢刑事は現在の事件を捜査するとともに、15年前に少年はなぜ警察官から逃げたのか、それも追い求める。失踪した男の母親の狂気、15年前に死んだ少年の母親の狂気。それらが入り交じり物語は解決へとすすむ。
 質問にキチンと答えない相手に、尋ねていることはこうです、と棘を刺すように発する三ツ矢刑事の言葉が楽しめる。かといってこの小説は存分に楽しめるというわけではない。二人の母親の狂気が余りにも異常でそれを物語に骨格に据えることは好みではない。また、瞬間記憶能力という特殊設定も好きではない。
 読んでいて、三ツ矢刑事が、何の脈絡もなく俳優の安田顕に重なった。シリーズ第2作も読むことになるかもしれないが、今は積んである未読の方がかなりあるので手を出すまいとしている。散歩がてらに書店に行ったら買ってしまうかもしれない――と書いた翌日買ってきてしまった。

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