2022年10月6日木曜日

通院、74歳まで・・・、江戸川乱歩賞

 10月に入った。今日は雨で肌寒い日となった。
 3ヶ月の間を空けて病院に行った。雨が降っているせいであろう駐車場は満車となっておりすぐには入れなかった。泌尿器科のエリアは老人たちが沢山いて、立って診察を待っている人も沢山で、老婦が老夫の座る車椅子を押す姿も何人か見かける。自分も受付に診察受付書を提出すると、お一人ですかと確認され、一瞬戸惑うがああそうか老人は付き添いもよくあるのかと得心し、いやオレは単に頻尿の薬の処方箋を頂戴しにきただけと口には出さずに独り言ちた。
 世の中がコロナ禍となってから人間ドックには行かなくなり、さらに友人が前立腺癌に罹ったこともあり、次回には一通りの血液検査を申し込んだ。3ヶ月後の1月6日には最初に採血をして結果を待ってから診察を受けることなる。
 ふと思う。10月となった。次回の通院は1月。そうか、74歳になる4月までは半年を切ってしまったか。やっぱり傍目には老人なのだろうな、60歳を待っていた頃が懐かしい。毎日深夜近くまで会社で仕事をしていた頃-定年を迎えるまで続いた-が思い出される。10年、20年の経つのは早いものである。

 <荒木あかね 『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)>:2022年第68回江戸川乱歩賞受賞作。作者は23歳の九大文学部卒業の女性。選者たちの高い評価を得て今年度の受賞となった。
 ドライブしていたら自殺者の死体がぶら下がっている。家に帰れば首を吊った父親の死体が不自然な格好のままに横たわっている。処置に困って道端に捨てた。あちこちに放置された死体がある。弟が卒業した中学校には殺された多くの死体が床に並べられている。殺人は体を何カ所も刺され或は切られている。等々、このような、死体がいっぱいという類の小説は好きではない。ゾンビが歩き回るとかホラー小説は絶対に読まない。だから読み始めにこのミステリーは自分の好みの範囲外であろうと感じた。が、豈図らんや、とても面白く読んだ。文章も上手い。作者はいい読書を続けてきたのであろう。
 数ヶ月後には小惑星が熊本に衝突し、地球は滅亡の危機にある。ために人々は海外に逃げ、あるいは絶望して自殺し、警察署からも署員はいなくなり、ごく限られた人が警察システム解消に向けて働いているだけ。ゴースト化する町-福岡近辺がこの小説の舞台。この設定の中で描く連続殺人事件が新鮮である。スピーディーで、殺人のロジックが明解で、伏線の張り方に感心し、語り手のハル-小春-の内面描写も上手いと感じた。
 物足りない点は、登場人物のそれぞれの人生のダークな部分や悲哀が掘り下げられていないこと。例えば、引きこもりとなった弟、元刑事で一緒に事件を追うイサガワ先生、警察官の市村、そしてハルのそれまでの人生など。短くともよいからもう少し深く描かれてもよいのじゃないか。最後の大団円は安手のミステリードラマを彷彿させられた。
 若いし女性ということも相俟っているのだろう、大型新人ミステリー作家と評されている。ただ、ミステリー作家というジャンルで括れば、桐野夏生のような、人生の深さや社会性を描写する作家にはなれないと思う。あくまでも娯楽的な視点で、今はやりの奇想な場面で殺人ゲームを物語する作家であろうと、今は感じる。この作者の本を読み続けるのか否かは次作が分岐点となろう。

0 件のコメント: