2023年1月6日金曜日

新書など4冊

 年末年始にかけて目を通した本。酒精を体内に入れながら、或はテレビをチラチラと目にしながら読んでいた。

 <渡辺京二 『あなたにとって文学とは何か』(忘羊社、2021年)>:2021年2月に熊本市での講演を収録した冊子。興味ある言葉を引用しておく-「私(わたくし)の事情小説」、「文学の下降」、「近代史の大半は「こういう国家をつくりました」という話」、「全ての文学はブラウン夫人から始まる(ヴァージニア・ウルフ)」、「文学とは、「私はこう生きたい」という自己の発現」。

 <読売新聞社会部「あれから」取材班 『人生はそれでも続く』(新潮新書、2022年)>:「日本中が注目した22人を、徹底取材」した「あの人は今?」。新聞やテレビで日本中に注目された人たち、あるいは出来事に関った人たちのそれからの人生。その人たちを取材した記者たちはストレートに共感し感動しただろうが、70年以上生きてきた人間から見れば冷めた視線でそういう人生もあったんだと思うだけ。つまり、「その人たちの事情」の中でその人たちは真摯に生きていているという思いだけである。

 <大沼久夫 『『上毛新聞』に見る敗戦後の群馬県』(上毛新聞社、2011年)>:共愛学園前橋国際大学ブックレットとある一冊。群馬県特有の敗戦後の歴史の一断面を見ることができるのではと期待したが、800円の無駄づかいだった。

 <今井伸 『射精道』(光文社新書、2022年)>:タイトルに惹かれて購入した。武士道ならぬ射精道、「『武士道』で語られている武士の魂である「刀」を、「射精道」では「陰茎」に置き換え」、「陰茎を持って生まれた男子が、射精を伴う性生活を送る上で守るべき道を意味」し、それを説くのが本書。まぁ既に卒業した-欲望は完全消滅しないが行動が伴わない-身としては過去の自分を振り返り、なるほどねと距離感をもって読んでみた、というところ。だが、「射精道」とは、言ってしまえば、他者への向き合い方そのものを説く人生訓である。
 1875年、『造化機論』出版の影響で「陰茎」「陰唇」「会陰」「卵巣」などの訳語が生まれ、江戸期の「陽」の性的行為が「陰」になってしまった。爾来日本には西欧キリスト教的道徳観念が滲透した。おおらかな行為が社会的規制の下で隠微になってしまい、その反面柔らかに体を被っていた和服が、体にぴったりと密着し輪郭を露わに誇張する洋服になってしまった。いいとか悪いとかではなく、そうなってしまったということである。

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