2016年12月13日火曜日

節酒、読書

 節酒をはじめて約3週間。飲酒日数率は30%台をキープしている。原則二日続けての飲酒はなしとしているが、大掃除を二日続けたときはその禁を一度破った。といっても以前とは大きく様変わりして飲むときの量はかなり減らしている。必然的に食べる量も減ってはいるが、まだ体重は計っていない。数値を見るのが(効果のないことを見るのが)コワイので、自分で減量してきたと実感するまでは待とうかと。

 飲酒量が減れば購入する酒も減る。その減った(減る)であろう金額でまとめて10冊ほど本を購入。宅配で届く本はひとまず区分してベッドの下の段ボールに収まっている。未読の書籍はジャンルを区分してリスト化しており、読むことを常に意識しようとしている。

 <勝目梓 『あしあと』(文春文庫、2016年初刊2014年)>:この著者の本(文庫本)は36冊も読んでいた。殆どは読書に倦きたときの気分転換や気晴らしといったところ。もちろん官能とバイオレンスという舞台を求めてのこと。これだけ読んだと言うことは著者にはストーリー展開と文章力があって楽しませてくれるからである。この『あしあと』は性愛に絡んだ短編物語ではあるけれど暴力はなく、淡淡と過ぎし日の、個々の主人公のあしあとをたどるが如く過去の性愛を振り返っている。好ましく思った作品は、戦争で死んだ筈の夫の弟と結婚をして生活をしているが、死んだ筈のそのかつての夫が帰還して情愛に苦しみ、情交を重ねるが相手は苦しみ自死してしまい、年老いて92歳になり老人ホームで暮らす主人公はその最初の夫との苦しい束の間の交わりだけを記憶しているという「ひとつだけ」。・・・勝目梓ももう84歳。読んでるこっちは67歳。

 <東野圭吾 『雪煙チェイス』(実業之日本社文庫、2016年)>:文庫書き下ろしで冬のスキー場シリーズ(?)の一冊。頭を空っぽにし、ほほいのほいと読んでしまった。ストーリー展開の巧さは相変わらずであるが途中で倦きてきた。活字は大きいし短時間で読んでしまい、記憶に残らない軽~いミステリー。

 <塩見鮮一郎 『戦後の貧民』(文春文庫、2015年)>:檻に入れられた裸の少年たちの写真が帯に描かれている。これが70年ほど前の敗戦の日本であることが衝撃的である。敗戦後に生まれた人びとももう70歳前後となり、敗戦後の記憶は薄らいでいくばかりと思われる。この本で述べられる敗戦直後の世相は自分にとっては直接的な体験ではないが、10代に見聞きした多くの記憶と重なる。傷痍軍人たちを上野で見かけたときは、その身体の不自由さと白衣の姿に何の言葉も発することができなかった。バタヤ部落のような一画は大学時代の高田馬場にあったし、アリの町もエリザベスサンダースホームもその存在は知っている。思えば敗戦直後の時代に興味があり、その時代に現れた作家の小説を大学時代によく読んでいた。
 戦後はみな貧しかったと一括りで語られることが多いけれど、売春せざるを得なかった女性たち、孤児となった少年少女たち、未亡人となった女性とその子どもたち、部落民の人たちなどの貧しさをも「みな貧しかった」と括ってしまうのは間違っているだろう。そこには政治の貧弱さだけではなく、日本という国のシステムの脆さ、GHQの非人道性、そして市井の人びとの差別などが貧しさを助長していたと思っている。著者は貧しさの現象を語るのではなく、その基底に横たわるものを見ようとする。著者の視座、例えば部落差別において「問題は部落民にあるのではなく、差別する市民の側にあるとわたしは思う」、この姿勢に共感する。
 この新書に触発され、積んだままになっている「貧民」や「差別」に関する本7冊を机の横に持ってきた。他の新刊本にあまり浮気せずにこれらを読もうと思っている。

 <山本亜季 『HUMANITAS ヒューマニタス』(小学館、2016年)>:Humanitas is a Latin noun meaning human nature, civilization and kindness.(Wikipediaより)。15世紀のメソアメリカの盲目剣士オセロット、旧ソ連のチェス王者ユーリ、イヌイットの鯨ハンター・エナと遭難で迷い込んだ英国人ウィリアム。生きることを探りながら死に、あるい駒を進め、あるいは齢を重ねる。3編のなかではエナに向き合うウィリアムの物語が最も深い。いい漫画である。次の作品が待たれる。

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