2017年7月25日火曜日

小説2冊

 春日部のショッピングモール内の本屋である雑誌を探したが、なかった。そしてここには岩波書店の刊行物はまったくおいていない。返品がきかないからであろうと確認したらそうです、注文されると取り寄せますと言う。注文して届くまで日にちを要し、またその書店まで受け取りに行かねばならない。そんなことはするわけがない、ネットで買えばすぐに配送してくれる。これでまたネットで買う比率が高くなってしまう。それに比較的大きな書店でもいわゆる売れ筋のものしか置かなくなってきている。つまらない、文化の衰退ではなかろうかと思う。
 この書店の新書コーナーにいたらうるさい声が聞こえてきた。「だからお前はバカなんだよ」「だからそんなことしか言えないからバカなんだよ」と、新書の新刊棚で本を探しながら男性がスマホで何度も大きな声で「バカ」を繰り返している。でかい声で「バカ」と繰り返すお前がバカなんだよと思いながらチラリと目を向けたら、60代と思しき人だった。最近、政界だけでなく全般的にバカが増えてきている気がする。

 <長谷川卓 『雪のこし屋橋 新・戻り舟同心②』(祥伝社文庫、2017年>:連作短編集という趣であるが、やはり通しで読むべきであろう。レギュラーで登場する皆の会話が楽しめる。女性陣(隼に真夏)をもう少し前に出してほしいが、代わりに(?)伊都の軽やかさが好ましい。
 鈴木英治は読まなくなって久しく、佐伯泰英は「居眠り磐音」シリーズだけで卒業し、葉室麟には手を出さなくなり(作風に倦きた)、藤沢周平も全く読まなくなった。いま、時代小説ではほぼ長谷川卓・志水辰夫だけとなった。永井義男の新刊が出ればすぐに読むのだが小説が発刊されない。まあ、馬齢を重ねれば倦きも生じてくる。

 <チャールズ・ブコウスキー 『町でいちばんの美女』(新潮文庫、1998年)>:30編の短編集。酒、女(男も)、自堕落、破天荒、放蕩、ギャンブル、卑猥、下品、・・どう表現していいのかわからないが、すべてが当てはまる。既設のレールの上に乗っからない人たちは共感を得て魅力的であろうし、そのレールに乗っている人たちには脱線願望を膨らましてくれる。オリジナルからの翻訳は相当に難しいであろうと想像できるし、一方ではオリジナルにある世界が日本語でどれくらい表現できているのか疑問も湧く。アメリカ人が味わうことを日本語ではかなり不足してしまっているであろうと思う。翻訳している青野聰のあと書きからもそれがうかがえる。
 日本でのタイトルは本書の最初にある短編のタイトルからきていて、『町でいちばんの美女』(「The Most Beautiful Woman in Town & Other Stories」)であるが、アメリカでのオリジナルの書名は『Erections, Ejaculations, Exhibitions, and General Tales of Ordinary Madness』である。このオリジナル書名の方が適切である。

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