2018年5月13日日曜日

樋口有介さんの45冊目

 <樋口有介 『平凡な革命家の食卓』(詳伝社、2018年)>:内容が要約されている帯を転記-「地味な市議の死。外傷や嘔吐物は一切なし。医師の診断も心不全。なんとか殺人に格上げできないものか。本庁への栄転を目論む卯月枝衣子警部補29歳。彼女の出来心が、”事件性なし”の孕む闇を暴く!?」
 主人公は前記のように29歳の準キャリアで脚が綺麗な女性刑事。場所は西国分寺。病死と判断された市議の殺人事件への格上げを巡って出てくる人物は、女性刑事以外に市議の妻と娘、隣り合わせのアパート住人の3人、医師。あとは警察内部とちょっとした関係者のみで、いつものような(?)魅力ある女子高校生は出てこない。柚木草平の名前が数カ所に出てくるがストーリーには無関係。アパート住人と深い関係になる女刑事はあまり魅力的ではないし、めがねの女性もさして面白い存在ではない。洒脱な会話は楽しめるのであるが、とても面白かったとは言えず、樋口ファンであるからしてそこそこ楽しめたというレベルと評しておこう。
 著書の小説にときどきあることだが、本作の書名がいまいちピンとこない。それから、真の犯人は市議の妻だったのか、という余韻は残る。
 『ぼくと、ぼくらの夏』が出た後、直木賞に一番近い作家と言われたのも昔のことで、サントリーミステリー大賞読者賞受賞以降はいろいろな賞の候補にはなるが受賞にはいたらず、いまはこの本が出版されたことを知って春日部市内の書店3店に足を運んだけれどどこにもおいてなかった。著者の名の影が薄くなったことなのか、あるいはこの新刊を置いていない春日部を田舎と感じるのか、両方含めて少し寂しい。
 1988年以来30年が経過して45冊目の樋口ワールド。

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