2023年12月7日木曜日

1週間ぶりに酔う。志水辰夫と高橋揆一郎の小説

 息子一家と長女の娘が来て久しぶりの賑やかさ。 AKAI EWI SOLOを演奏しPCに保存してある曲を息子の嫁さんに強制的に聴かせる。気遣いと忖度もあるのだろう、オレの演奏を賞めてくれるのは彼女だけ。連れ合いにいたってはお金をくれるならば聞いてあげるという姿勢だし、息子と娘の長女はほーっと言うだけだし、息子の娘は他の曲がいいと言い張る。そりゃそうだろう、60年近く前の曲はあるし、一番新しいものでも20年以上も前という古さであるし、中には全くヒットしていない曲もあるのだから。
 1週間ぶりに身体の中にアルコールを流し込んだ。息子持参の酒精もあり、ビール、日本酒、ウィスキー、泡盛と飲む種類はバラエティーに富むがどれも過度には飲まずにいた。が睡魔が襲ってきていつもりずっと早い時刻の22時ちょっと過ぎには着替えもせずにベッドに転がった。ために4時頃には目が覚めてしまった。しばしぼんやりと妄想に漬り、その後は外はまだ暗い中で本を読み続けた。

 <志水辰夫 『負けくらべ』(小学館、2023年)>:「19年振りの現代長編」と謳われており、オレにとっては18年振りとなる現代長編であり、4年振りの長編小説で、39冊目となる。シミタツ健在という感あり。このような物語構成を良くも考えるものではある。86歳でもかように柔軟な思考力・想像力・感性を持ちたいと強く思う。

 <高橋揆一郎 『伸予』(文藝春秋、1978年)>:45年前に発刊された額面780円の芥川賞受賞の小説をメルカリにて1200円で購入。もうすぐに50歳になろうかともいう元中学校教師の未亡人が、女学校を出て教師に成り立ての頃、新制中学3年の善吉に特別の想いを抱いていた。親の言うままに実直な男と結婚をし、3人の子をなし、長男と長女は他地で家庭を持ち子供もいる。孫もいる初老-50歳になっていない人を初老と呼ぶには現在の感覚では残酷な気もする-の伸予は24歳の次男と同居している。
 30年以上の空白を経て伸予はかつての5歳下の教え子である善吉と再会し、彼との再会を喜び、逢瀬に心弾ませる。一度だけ、下半身だけを露して身体を重ねる。善吉が行方知らずとなってから己の身体に老醜を見る。少年の顔を形作っている彫金に火と鏨を向けて形を抉り、「少年の目をつぶしながら伸予は声に出して「おとうさぁん」といった。「かんにんしてよぉ、もうしないから」 ぽたぽた涙を落としながら。少年の鼻を削り、口をそいでいった」。この最後の文章が秀逸。45年前の現代小説はその小説作法に古臭さを感じさせる。また、伸予が教え子に想いを抱く心境、夫や3人の子に向き合う視線が描き切れておらず、伸予という女性に共感は得られず、この小説に物足りなさを覚えた。
 一緒に収められている「ぽぷらと軍神」「清吉の暦」は読まずに済ませた。

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