2015年11月18日水曜日

1枚のLPの想い出

 静かな夜、LP・EPを引っ張り出して音楽を聴き、ついでにmp3化していると、そのレコードから昔の出来事がふと思い出されることがある。今夜は平山三紀のベストアルバム(JDX-7204)をターンテーブルにのせた。ジャケットには”73.8.18 ○○ko”と記されている。○○koは家人の名前で、このレコードは確か、銀座付近のレコード屋さんで彼女が購入しプレゼントしてくれたもの。当時、自分は給料を手にしてから月に一度、金曜日に夜行列車に乗って富山市から上京し、日曜日に帰るまで彼女といわゆるデートなるものをしていた。1973年8月18日はお盆休みを利用して東京に出てきたときである。いきさつははっきりとは覚えていないが、歌手の話にでもなって、自分は平山三紀が好きでEP盤を持っているとでも口にしたことから彼女が買ってくれたものだと記憶している。

 富山市では不二越という会社で工作機械の機械設計をしており、独身寮に住んでいた。ある日、一年先輩が-顔は思い出すのだが名前は出てこない-レコードを貸してくれと自室にきて何枚かのLPを物色した後にこの平山三紀のLPを持って行った。
 数日が経ってその先輩がLPを返しに来たとき、中身を新品にしたと言った。新品にした理由について彼が言ったことは、「酒を飲みながら麻雀をしていて、針が飛んだりしたので傷をつけたかもしれない。ジャケットを見たら女性の名前を書いてあるので、これはまずいことをした。大事なものだと思うので新品を買って中身だけ交換した。申し訳なかった」ということだった。傷が付いたのか否かははっきりしなかったようであるが、念のために交換したようだった。こっちはその律儀さに恐縮したのだが、先輩の気遣いが嬉しく、有り難かった。

 このLPに書かれた日付から1年と2ヶ月弱が経って結婚したのだが、このレコードはその頃に購入した他のレコードとともにほぼ新品の状態を保って今も棚に置かれている。それからは自分も家人も42年という年齢を重ねた。