2017年4月4日火曜日

『昭和後期の家族問題』

 <湯沢雍彦 『昭和後期の家族問題』(ミネルヴァ書房、2012年)>:『昭和前期の家族問題』と同時に購入しなかなか頁が進まなかった。「家族問題」というよりも「世相史」的な受け止め方をしてしまう。そしてその世相は自分が生きてきた時代と重なるので身近に感じる。
 著者は何を目的にしてこの本を表したのか少し戸惑いを覚えた(逆な言い方をすればオレはこの本を何故読んだのだろう、何を目的にしたのだろうと自問する羽目にもなった)。というのは、新聞や雑誌の記事、調査による統計等々を基礎として夫婦や家族内での軋轢、売春取り締まりの法整備、等々を分析し既述するのであるが、表面的な事象をエピソード的に並べているだけのようにも感じ、その事象の原因や本質的なものには深く入っていない。「家族問題」とは個々の人々や家族の問題であって、共通項はあったとしても実質的には千差万別であろうから全般を括ってしまえばその時代時代の世相を述べているに過ぎないと思える。
 349-350頁では、「大多数の日本の家族にも弱点がいくつかある。その最大の課題は、家族の中の人間関係すなわち心のつながりの淡さ、薄さにある」とし、「とにかく日本では夫の在宅時間を増やし、地位の対等性、役割の共同性、情緒の一体性を確立することが先決」と結論づける。そのためには「『家族』こそ一番大切なものとの思いを増し、その表現をはかるよう努めることではないだろうか」と結論する。判ったような判らない、表面的なキレイな言葉でまとめてしまっている。
 上記の頁で、「あなたにとって一番大切と思うものは何ですか。一つだけあげてください(何でもかまいません)」の回答における年度別推移に言及している。文章では判りにくいので原データにアクセスし、グラフ化してみた。(原データとはhttp://www.ism.ac.jp/editsec/kenripo/pdf/kenripo116.pdf)
 子供と家族を別個にしている意味が分からないので「子供+家族」を追加した。昭和33(1958)年は生きること、食うことが一番の課題であったのか、生命・健康・自分が一番大切で、昭和58(1983)年からは家族が1位となっている。国家・社会は全体的に下位にあるが、昭和58(1983)頃からは1乃至2%であり、家・先祖も似たようなものである。もしかしたら、日本の人々は思ったほど国とか先祖を重くは受け止めてはいないのかも(?)。尢も、「一番大切なものは何ですか。そのためには何が大切かと思いますか」という質問をすれば異なる結果になるであろう。

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