2016年9月10日土曜日

最近読んだ本・漫画(2)

 <雨瀬シオリ 『ALL OUT 8』(講談社、2016年)>:弱いチームには技術的に優れてはいるがどこか投げやりになる者がおり、またスキルは劣るが前向きで根性があり、練習試合とはいえ強豪チームに勝つ。そしてやる気のない教師が覚醒して献身的になり、老コーチがラグビーを教える。勝利の喜びとまだ気付かない壁。・・・・・よくあるスポーツ漫画のラグビー版といってしまえば終わりだが、この先の展開に期待してしまう。今秋よりテレビ放送開始される。しかし多分見ることはしないであろう。

 <東野圭吾 『夢幻花』(PHP学芸文庫、2016年)>:上手い。とても上手く、東野さんのミステリーを十分に楽しめる。若い人たちの配置、進路への悩み、負の遺産への向き合い、伝奇的な匂いも少しするが、エンディングまでほぼ一気読みで楽しんだ。水泳を諦めた秋山梨乃、進路と家族内での疎外感に悩む蒲生蒼太、謎めいた行動を取る蒲生要介、突然に姿を消した伊庭孝美、殺されたのは秋山老人、彼に恩義を感じて単独行動で犯人を捜す刑事の早瀬、家族に秘められた謎。共通するのは黄色いアサガオ。それぞれを配置し、構成の中で巧妙に繋がりを持たせ、伏線を張り、徐々にほつれをほどくストーリー・テリングは秀逸。

 <長谷部恭男 『憲法とは何か』(岩波新書、2006年)>:『不毛な憲法論議』を読む前にこっちを先に読むべきだったか。憲法とは何かを学術的に学ぶ気持はないし、その能力もない。ただ単に引用文を繋いでメモしておこう。
 「異なる価値観・世界観は、宗教が典型的にそうであるように、互いに比較不能である」(9頁)し、昔の欧州のように「人としての正しい生き方はただ一つ、教会の教えるそれに決まっている。ここでは公と私を区分する必要もないし、信仰の自由や思想の自由を認める必要もな」(69頁)かったのであるが、いまのこの世の中で価値観は多様化し、まして日本には多くの神や仏がおり、戦前の如き「究極の価値を体現する天皇との近接関係でによって一義的」(13頁)に秩序立てられる筈もないし、されるべきではない。だから、「立憲主義がまず用意する手立ては、人びとの生活領域を私的な領域と公的な領域とに区分すること」(10頁)が大前提になる。
 私感:「公」という平面に「私」の小さな平面がべったりと糊付され、「家族」の延長線上で「愛国」が語られるのはやはりキモチワルイ。日本の伝統的家族観は価値あるが、それが伝統的価値秩序に置換され、大切にしたい伝統が、知らず知らずに伝統に囚れることにはなりたくない。その上で語られているかもしれない憲法改正・自主憲法・明治憲法復元にはなじむはずもない。

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