2016年11月14日月曜日

漫画と小説とエッセイ

 <原泰久 『キングダム 四十四』(集英社、2016年)>:酔っていたせいもあろう(といえば失礼になるが)、いつも以上に楽しめた。「渇いてねェんだ 心が渇いてねぇから略奪も陵辱も必要ねェんだ 飛信隊はどこの隊よりも心が潤ってんだ」、この台詞がこの巻のエッセンス。

 <浦沢直樹 『BILLY BAT⑳』(講談社、2016年)>:完結したけれど、結局消化不良。惑わされてそのままに終わったという感じしか残らない。終わりかたも性急に進めた印象あり。

 <白石一文 『記憶の渚にて』(KADOKAWA、2016年)>:人が生を受け継いでいるなかで、記憶とは何でどう持ち続けているのか。連綿と続く生の繰り返しのなかで前の人の記憶が残る。問い詰めれば「私とは一体誰か?」という問いを自分に問い続けることとなる。著者はこの根源的な問いを常に小説という舞台で展開し続ける。兄の死、伯父の死、教団との関係、桜の木の謎、・・・900枚の長編も倦きることなく読み続けたが、帯にある「圧巻のラスト」に行き着いてみれば人びとの関係はすべて仕組まれたことであって肩すかしを食らった、生煮えの鍋物を食わされた感が強い。しかし、著者の「私とは誰か」を思索し追い続ける姿(作品)にはいつも引き込まれる。

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