2017年8月11日金曜日

最近よく聴いている音楽

 聴いたことのない音楽のCDを買うのはある種の賭け事のようなもので、聴いて気に入らなければ(嫌いなものを知ったとポジティブに捉えることもできるが)基本的にお金と時間の無駄遣いであり、好きになると更にアルバムを追加購入してのめり込むこととなる。好きにならなかったものを、時間をおいて再び聞いてみると案外好きになることもあり、3回4回と聞いても響いてこないものもある。
 そんななかで、いままで触手を伸ばしながらなかなか手に取ることがなく、やっと聴いてみた冨田勲の「惑星」とDebussyはどうも好きになれない。昔から評価の高いアルバムであるが、何度か聴いてみても魅せられることはなかった。期待が大きかっただけに肩すかしをくらったような感じであった。シンセサイザーの奏でるクラシックそのものが好きではないのかもしれない。特に好きなDebussyへの期待が膨らんでいただけに落胆の度合いは大きかった。
 Kronos Quartetは相変わらず新しいアルバムを聴き続けており、その絡みでThe Nationalを知ることとなった。そして、ひょんなことから、マイナーもマイナーであるが、The Enemiesに惹かれた。しかし昨年に解散してしまった。マス・ロックと呼ばれるらしいが、ミニマル・ミュージックの影響は多分にあると思う。クリーンなエレキギターが耳に残る。アイルランドという地の影響があるのだろうか。
 この一年もっとも好きになったのがLudovico Einaudi。昨年春に映画「最強のふたり」を観たときにそのテーマ音楽に魅せられ、以来複数枚のアルバムを聴き続けている。Einaudiの演奏だけではなく、Cecilia Chailly (指揮者Riccardoの妹)のエレクトリック・ハープも素晴らしい。アルバムを探していて見つけたJeroen van Veenの奏でるピアノ曲集CDも気に入った。その延長線上でVeenのCDを探してみて、ミニマル・ミュージックのSimeon ten Holtを知り、やはり聴いてみたくなり、実質2千円と少しで11枚組のセットを購入した(Amazonでラスト1セットだった)。Holtはオランダの作曲家でSteve Reich(好き)やTerry Rileyの曲とは趣を異にしており、何度も何度も切れ目なく繰り返し演奏されるピアノによる演奏は、魔法にでもかかって違う次元の世界に吸い込まれるようでもある。オルガン演奏によるHoltもあるけれどピアノの方がいい。ついでにといっては何だけれど、Veen演奏のYann Tiersenもいい。
 こうやって好奇心の趣くままに知らなかった音楽を聴くと、世界の広さ、人間社会の多様性といったものに今更ながら思いを巡らし、我が身を置く場所がまるで井の中に思え、まだまだ大海の一滴にしか触れていないのではないかとの思いがする。自己のすべてを絵や音楽に投射できる人は芸術家と呼ばれるのであろうが、その能力-感性も想像力も創造力も表現力も何もかも-が備わっていない我が身についてはただぼんやりとこの現実を受け容れるしかない。凡人がなせるのはせいぜいその程度である。

0 件のコメント: