2018年10月4日木曜日

長距離列車移動の本

 <下川裕治 『鉄道2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす』(新潮文庫、2018年)>:下川さんとカメラマンの二人が長距離列車に乗り込んで始発駅から最終到着駅まで乗り続ける。3日から7日もただただ列車に乗り続ける。インドでの社内環境は最悪で定員72名の車両に200人以上がひしめき、まともな姿勢で眠ることも許されない。中国では広州からラサに向かい、ロシアはシベリア鉄道、カナダはバンクーバーからトロントへの大陸横断、アメリカではシカゴからLAまでの迂回路。どれも運行距離/運行時間は想像を絶する。上野から札幌とか、あるいは東京から博多なんて比べるにも値しない。
 9年前の12月、初めて北海道に旅行をし、そのときに乗った寝台特急カシオペアが自分のなかでは一番長い時間を過ごした列車であり、もちろん個室で食事も運ばれてくるし、ベッドもある。それでも夕方に大宮から乗車し、約17時間後に札幌に到着したときは飽きていたし、もう一度乗りたいとも思わなかった。それを思うと本書での列車移動は低グレードの車両で、食事は自分で持ち込み、ベッドもないなんてどれだけ苦痛となるのか想像すらできない。経験もしたくない。異国での長距離列車にロマンチックな思いすら湧き出てこない。
 本書は旅行の本ではなく移動と車内観察記といった内容であり、以前何冊か読んだ下川さんのアジア旅行記にはアジアの濃い空気を感じさせられたが、今回の列車移動の本は内容が淡淡としていて少し物足りなさを感じた。

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