2019年7月7日日曜日

とりとめのない読書4冊

 <三橋順子 『新宿「聖なる街」の歴史地理』(朝日新聞出版、2018年)>:Wikipediaによれば、著者は「日本における性別越境(トランスジェンダー)の社会・文化史研究家である。戸籍上の性別は男性」とある。評価が高い本書を知った1年程前、表紙の艶やかな諸肌を脱いだ後ろ姿も相俟って、本書を著す女性は、知的で理性的で凛としている人をイメージした。だから、頁を開いて暫くしてから著書は戸籍上は男性であることを知って、当初抱いたイメージは崩れはしないけれど意外な思いを抱いた。高等教育のカリキュラムには載らないであろう売買春の現代史を、地図・公文書・文献・出版物・実体験をベースにして、よくぞこれほど調べ上げたものである。性を核に据えた傑れた現代史テキストであるし、生活文化史・社会史である。

 <中山康樹 『ロックの歴史』(講談社現代新書、2014年)>:1951年頃に「ロックンロール」という呼称が生まれ、当初のブラック・ミュージックから白人的要素が混じり、1964年にビートルズがアメリカに上陸して「ロック」となり、その後アメリカではポップス系がメインとなり、ロックはイギリスで展開する。フォーク・ロック、ハード・ロック、グラム・ロック、そしてプログレッシブ・ロックへと展開している時代は、まさに自分の10代後半から20代後半の時代であった。
 ロックンロールのプレスリーは好みでないし、ビートルズやアニマルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクス、ゾンビーズ、デイヴ・クラーク5などにはロックという呼称よりもポップスという感覚に自分はなっている。そもそも「ロック」という区分がよく分かっていないし、分かろうともしていない。ジャンル分けに意味を感じ取っていない。例えば、内田裕也が「ロック」と口に出して片膝をついても何か滑稽さを覚えてしまうのだから。
 クリフ・リチャード&シャドウズをブリティッシュ・ロックの嚆矢とし、本新書はイギリスでのロックがの変遷を中心に描かれている。レコードや曲の逸話を斜め読みしながら、昔のグループや曲を懐かしんだ。
 ビートルズが日本でまだ有名になる前の1962年、「トニー・シェリダンとビート・ブラザース」の名で「マイ・ボニー」が「マイ・ボニー・ツイスト」との邦題で発売された、このことは初めて知った。ツイスト全盛期のころである。

 <飛田良文 『明治生まれの日本語』(角川ソフィア文庫、2019年、初刊2002年)>:21語の成り立ちが文献に裏付けられて丁寧に説明されている。その丁寧さは簡略化され、より多くの言葉が取上げられ、「明治生まれのことばの語源辞典」というようなものを期待していた。

 <池井戸潤 『ノーサイド・ゲーム』(ダイヤモンド社、2019年)>:社会人ラグビーを軸にした企業小説。書名に惹かれて手にとった。左遷させられた主人公がラグビー部のGMとなり、ラグビー部運営改革と会社組織の不正を正す。併せて現実の日本ラグビー協会を思わせる日本蹴球協会の改革にも乗り出す。著者の他の小説にあるパターンが予定調和的に展開される。ラグビー部監督や選手たちの描写を読んでいると、清宮監督や大田尾、小野晃征が浮かんだ。
 まもなくドラマ化されてテレビ放映される。小説とドラマの違いを見るのも楽しみになるであろう。と思ってキャスティングを確認してみたら、原本には登場しない人物がかなり設定されている-主人公の妻や監督の娘、飲食店の女将等々。キャスティングの失敗ではないのかと思うケースも多々あるが、それは本を読んで登場人物のイメージを自分勝手に作り上げたからであろう。まぁ、原本と映像化されたドラマは別物ということである。廣瀬俊朗と齊藤祐也が出演する。

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