2019年10月18日金曜日

ラグビーの本

 <李淳馹(リスンイル) 『ラグビーをひもとく 反則でも笛を吹かない理由』(集英社新書、2016年)>:RWCが毎日のニュースを賑わしている。32年前(1987年)に読んだ傑作『オフサイドはなぜ反則か』(中村敏雄)には僅かな記憶しかない。が、ラグビーの歴史に触れ、イギリスと日本とでは大きく違う環境や設備を知り、オフサイドの「サイド」は陣地のことであり、ラグビーは多勢で長時間にわたって楽しむお祭りであったことを知った。この新書が発刊されたとき、興味があってすぐに買い、しかし数頁読んでは他のことに気を惹かれ放っていた。今回のRWCもあり再度手に取った。著者は刊行当時、関東ラグビーフットボール協会公認レフリー。
 ラグビーのルールが規定された理由、そして繰り返される変更の理由が論理的に丁寧に述べられている。もちろん、その基底にはラグビーの「文化」があり、初めて知ったことも多かった。例えば、「ラグビーは、ルール(規則)ではなく、ロー(法)の下でプレーされる」ということ。なれば、ルールとローの違いとは何かと考えることになる。「Rule by Law」(法治主義)と「Rule of theLaw」(法の支配)の違い、分かりやすい。
 また、レフリーとアンパイアの違い、レフリーとジャッジの意味などはなるほどと思わされた。「いいレフリーは、反則をポケットにしまうことができる」という金言に対し、笛吹童子のごとく「ルール」へのジャッジをすることが多い(日本の)レフリーは秩父宮などで何度も目にしている。
 アドバンテージがあるからこそプレーの継続が図れ、プレーヤーとレフリーのコミュニケーションも、レフリーが選手に声を掛けるのも、反則を予防し、プレーを楽しみ継続させることにあることを再確認した。「相手側から利益を奪ったか」否かをレフリーは判断して仲裁役を務める。ラグビーのプレーとはボールに触れることであり、それを理解することでゲームの流れをより楽しめる。観戦しているとノット・ロール・アウェイが判然としないことがあるが、タックルとは、タックルされたとは、またタックラーとはどういう定義なのかを読むと、より具体的に理解は深まった(ような気がする)。
 『ラグビー憲章』にある5つのキーワード、とてもいいし、それを理解することでさらにラグビーは楽しめるし、オン・プレーの時も、ノー・サイドになったときも、選手たちの姿や言葉・行動に感情を入れ込むことが可能となる。それは、品位Interrity)・情熱(Passion)・結束(Solidarity)・規律(Discipline)・尊重(Respect)。

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