2021年7月24日土曜日

つづけて『秘剣の名医』4冊

 <永井義男 『秘剣の名医 五 蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2020年)>:居を下谷七軒町に移し、下女と下男はお末と虎吉夫婦。助手・弟子はいない。書名のサブタイトルも「吉原裏典医」から「蘭方検死医」へと変化している。
 今回は背中をばっさりと切られた本屋の越後屋亭主の傷を縫合し、犯人を明らかにするとともに越後屋一族の謎を解き、和解の手助けをもする。伊織が所帯を構えたと誤解していたお園は、伊織が独り身であることを知り、丁稚と下女を伴いながら伊織の生活に入り込んでくる。
 ストーリー構成がうまく練られていて楽しめる。

 <永井義男 『秘剣の名医 六 蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2020年)>:時代は11代将軍家斉の頃。事件に巻き込まれた按摩の苫市を助け、彼は嫁を迎えることにもなった。続いて起きた事件は白骨化した死体で、関連する3年前の事件の謎ときをし、殺されていた清吉の濡れ衣を晴らす。兄が殺人の下手人であるとされた妹は苦界に身を落としていたが、兄の雇い主であった者の助力もあって身を解き放つことができ、その彼女もまた所帯を持つこととなった。
 メインで活躍するのは伊織と岡っ引きの辰治。助演役として助手兼教え子の助太郎、下男下女夫婦。悪人はその罪を暴かれ、そうでない人は善人でいつものように心地よく幕が閉じられる。
 
 <永井義男 『秘剣の名医 七 蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2020年)>:棒手振が担いでいた籠の中の南瓜が男の生首と変わっていて、首無し死体が長屋に見つかる。死体はちんこきり職人で、ちんこきり屋の15歳の娘はちんちんかもが大好きで、その娘に間接的に絡んだ貧乏侍たちが悪知恵をはたらかし、金精神で一儲けをしようと企む。
 最後には、生首と首無し死体の事件を解決し、蛇蝎の如く嫌われていた武士の一味が悉く捕らえられる。元大工の下男虎吉は金精神の木彫りを作って事件解決に一役をかい、辰治の計らいもあって金精神の製作で元気を取り戻す。
 お園は登場しないが、新たに好奇心の強い咸姫が屈託なく金精神を手に取って面白がっているところで巻が閉じる。

 <永井義男 『秘剣の名医 八 蘭方検死医 沢村伊織』(コスミック・時代文庫、2021年)>:幕府重臣の子がすぼけ魔羅で筆おろしができない。友人吉田から相談された伊織が吉田とともに包茎手術をし、目出度く跡目争いに結果を出した。
 場面は変わり、斬り合いになった部屋住みの武士の治療を依頼され、肺まで刺されて助からぬその武士からヘイサラバサラ(馬糞石)を遊女に渡すよう依頼される。
 咸姫は輿入れが決まり、伊織のところには新たにお喜久が解体新書を学びに通うようになる。お喜久は蝋燭問屋会津屋の娘で後家なのだが、再度婿を迎えることを拒み、好きな絵を描くことに専心するようになる。彼女の描く絵はかなりの腕前で、伊織が務める検死の場にも臨み、同心鈴木と岡っ引き辰治に死体の似顔絵を提供し事件の解決に貢献する。以後、事件があれば似顔絵をものにして捕り物に絡むようになる。
 そして、両替屋加賀屋が施設する診療所にて出張診療することを決める。

0 件のコメント: