2024年8月5日月曜日

雑記、本3冊

 佐渡島が世界遺産に認定された。世界遺産の意義はきちんとしたものが存在するのであろうが、日本という国においては単に観光経済のための手段であると思える。

 オリンピック、歓喜と悔しさ、賞賛と批判、等々。スポーツ観戦は好きだが感動の押し売りは不愉快。

 <藤巻一保 『戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人』(二見書房、2023年)>:暑いので一気読みとはいかず3週間ほど要してしまった。何故に神憑りになってしまうのか十分には理解できない。現人神天皇化による教化と臣民統制によって、何かに依存して自己顕示・自己確立を志向するする人が神憑り的になってしまうのであろうか。その本質は、人は何かに支配されたい、従属したいというような気質があるのかもしれない。そうすることによって集団の中で生きることが楽になるのであるから。 語られる(章立てされる)人物は、四王天延孝・安江仙弘・犬塚惟重・山本英輔・小磯国昭・矢野祐太郎・浅野正恭・秋山真之・秦真次・満井佐吉・相沢三郎・磯部浅一・清原康平・大岸頼好・大久保弘一・石原莞爾、最後に昭和天皇と東条英機。

 <沼井邦満 『メコンの南の町から』(新潮社、2023年)>:サブタイトルは「タイ、田舎の高校で過ごした500日」。メコン川の南、ラオス国境に近いタイ/ルーイの近くの高校で日本語を教えた体験記。タイの文化、環境を主に描くが、相対的日本文化への批評、文字文化に対する記述も多い。読む前には濃厚なタイの人々の生活や文化の活写を期待したが、さほどではなく浅くて薄いという感じである。一方、日本文化批評あるいは漢字字義に多くの頁が割かれていた。しかしそこには真新しいさや鋭さはなく、全体的にこちらの前のめりの期待に肩すかしをくらった気分である。

 <辻田真佐憲 『「戦前」の正体』(講談社現代新書、2023年)>:サブタイトルは「愛国と神話の日本近現代史」。その内容は、「大日本帝国を「神話に基礎づけられ、神話に活力を与えられた神話国家」と定義したうえで、戦前を五つの神話にもとづく物語に批判的に整理し」て論じられる。五つの物語とは、「原点回帰」「特別な国」「祖先より代々」「世界最古」、そして「ネタがベタになる」物語。 先に読んだ神憑り軍人の基礎にあるのが明治になって完成された「神話」である。神話への原点回帰というよりも、明治回帰を主張する声が今は濃くなっている気がする。現在の日本の姿を形作ったのは記紀に依拠する歪んだ神話形成である。

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