2017年2月4日土曜日

國・国・くに

 トランプの一挙手一投足ならぬ一ツイッター・一大統領令が連日テレビや新聞を賑わしている。私的な意見や感想を述べたところでどうにもなるものではなく、何時まで続くか分からないこのトランプ劇場を眺めているしかないのが現実。少なくとも今の民主主義のシステム(選挙システム)に対する疑念が湧き上がらなければそれこそ変だぞと思うこの頃。得票率と獲得選挙人の食い違いを言っているのではなく、今の選挙システム(多数決とか投票の重み付けとか選挙権などなど)への疑念である。

 秦の時代を中心にして久しぶりに中国の歴史のテキストを再読している。当然ながら「国」のあり方が叙述されており、横道にそれて「国」の字をおさらいしてみた。以下はそのメモ。

 「国」の旧字は「國」、また「邦」もよく目にする。そもそも「國」は西周金文では“くにがまえ”のない「或」で、口は城郭あるいは邑を示し、一は土や地や境界の意であり、それらを戈で守っていたのが「或」である。西周期(前1027 - 前771年)の「或」は王朝の軍事的影響力の及ぶ広い地域を指していた。「或」をさらに「口」で守る「國」は都城の意味である。
 「或」は又(ゆう)、有(ゆう)とも声義が通用し、有が一般的にある意であるのに対し、或は限定的な意味を持ち、ために「あるいは」と不特定の意となる。唐((618年 - 907年)に入って則天武后はこの「或」は「域」で限定的な意があるからと「或」をやめて「八方」に代え、「圀」を制定した。「或」は、惑うの「惑」につながるから「八方」に代えたとの記事を目にしたこともある。水戸光圀はこの圀である。
 一方「邦」は社稷(土地神を祭る祭壇と穀物の神を祭る祭壇の総称)に封樹(墓に土を盛り樹を植える)のある邑で、封建による国都をいう。つまり、「國」は軍事的、「邦」は宗教的な性格をもつ字である。
 國の略字は「囯」(口+王)で漢代(前206-220年)隷書から見られるらしい。あるいは隋王朝(581-618年)かららしい。王が治める土地であるからと王を城郭で囲って「囯」となったという説がある。じゃあ「国」は何で「国」になったのかと疑問を抱けば、「国」はこの「囯」に点を付けたもので、書の世界ではおまけのような感じで点を付すこともよくあるからというのが一説。また、「或」を崩して「国」になったとか、戦後の当用漢字制定時に「國」に代えて「国」が作られたとの説もある(日本には王がいないから玉にしたとか)。すっきりしないが分かった気分にはなる。
 『字通』で「くに」を見ると、「土」「邦」「國」「国」「或」「圀」「県」「縣」があり、さらに『異体字解読辞典』で口部の「くに」を引くと、「囯」(口+王),囶(口+八+土)、*「口+民+丶」、*「口+戈」などがある。*はフォントがないので記せない。
 以上は下記を参考にし引用もした。
 『字通』(平凡社)、『異体字解読辞典』(柏書房)、『中国の歴史 上』(昭和堂)、web「漢字文化資料館」(大修館書店)、wikipedia、ほかに個人のwebも幾つか参考にした。

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