2019年1月26日土曜日

現代学生百人一首より

 東洋大学「現代学生百人一首」、第32回入選作より以下を選択。

     船に乗り海へ出ていく祖父の顔私が一番大好きな顔
 北海道の高校生の句。この句の作者は、きっと人に優しく接し、人の温もりも悲しみも感じとり、人生の深さにも入り込める人なのだろう。

     「お前」って君はいっつも呼ぶけれど私の名前そんなに嫌い?
 秋田県の高校生の歌。この歌は声に出して秋田弁で詠むとより一層情感が胸に染みこんでくる。特に「いっつも」に気持ちを入れ込むこと。

     冬の日にあなたと二人歩く夜手袋してない私に気付いて
 この句はいいなぁ。気付かない男にもなりたいし、二人から離れて優しくその情景を眺めてもいたい。

     LGBT普通じゃないと人は言うあなたの思う普通とは何?
 思考が浅く、自立も自律もしていない、依存性の強い人間ほど「普通は・・」とか「・・・普通じゃない」とすぐに口にする。「普通は・・」を「世間では・・」と置き換える場合もある。

     何にでも「平成最後」とタグ付けてそれでも変わらず流れる日常
 直木賞選考委員の林真理子センセは「平成最後の直木賞にふさわしい作品」と今年度上期の受賞作を評したが、「平成最後にふさわしい」の意味がまったく理解不能。まぁ、彼女は横山秀夫『半落ち』で、「この作品は落ちに欠陥があることが他の委員の指摘でわかった」と他者の見解を引いてそのまま評価に結びつけた人だからしようがないか。

     ハロウィンと子供が騒ぐその奥で秋空彩る完熟の柿
 かぼちゃの黄色、澄み渡る青い空、熟した柿のつややかな橙色が水彩画のように浮かんでくる。感性豊かな中学生。

     ケータイをもつまえ交わした文通の貴方の書いた字愛しく思う
     ありがとうLINEではなく電話する母から届いた荷物眺めて
 短絡的に縮められたKINEスタンプでなく、数行の無機的なフォントの文字でもなく、大切なのは口から発せられた言葉であり、手で書いた文章。どちらもその人の「個」により深く思いを寄せることができる。

 今回の作品群のなかに我が母校、会津高校からの句はなかった。というか福島県から選ばれた句がなかった。
 昨年、一昨年と秀島由里子さんの歌が選ばれていたが、今年はなし。受験勉強で忙しかったか、あるいは選に漏れたのか。

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