2019年4月23日火曜日

辺境人の質問

 ブラックホール撮影成功に関してアメリカ政府の国立科学財団にて会見が開かれ、そこで高校生の女性が次の質問をした。
今回のことは、科学界の国境を越えた協力による大きな功績だと思いますが、今後こうした共同作業は科学界においてひとつのモデルとなるでしょうか。なるとすれば、どういう課題があり、私たちには何ができるでしょうか。
次に質問したのはNHK記者の質問。
私は国際共同研究に関して質問があります。今回の成果が突出した共同研究であることは理解しております。それぞれの国、特に日本がどんな貢献をしたのかについてお聞かせください。
そして、
NHK記者の質問の最後の言葉「especially Japan」の言葉が場内に響いた瞬間、場内のあちこちから他国の記者の笑い声が漏れた。
「Japan Today」は4月12日に「NHK reporter laughed at for asking black hole team for more on Japan’s contributions」と見出しをつけたニュースを配信。
一方、女子高校生は
パネラーから「That’s a great question」との言葉をもらっていた。
以上、引用は「LITERA」から。

 この記事を読んだときに思い出したのが読み終えたばかりの内田樹『日本辺境論』に書かれていた内容で、上記同様に引用する。
「日本は世界に冠絶するすばらしい国だ」と揚言する人がたまにいます。けれども、かれらはつい日本がいかにすばらしい国であるかを挙証してしまいます。
「世界に準拠してふるまうことはできるが、世界標準を新たに設定することはできない」、それが辺境の限界です。
要は、辺境人の視座は世界観に立つ位置にはなく、世界の中でどこの位置に立っているのかを確認したいと言うことである。でもそれをただ「日本メディアのお粗末さ」を指摘するのではなく、そういう性癖でものを見てしまうのだと自覚することであろう。例えば「わが日本は世界各国とともに貢献したと思うけれど、今後起こりえる課題に対し、どのように立ち向かっていけばよいのか」というような質問ならば少しは場内の笑いを抑制できたのかもしれない。

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