2020年1月17日金曜日

ミステリー2冊

 <長岡弘樹 『風間教場』(小学館、2019年)>:帯にキムタクの写真、気にくわない。特定の人物の写真を載せることは、これから小説を楽しもうとする自由な先行きを限定的に方向付けするようなもので、愚かである。『教場』と題して1月4日と5日にキムタク主演でドラマを放映していたが、もちろん見ることはしない-この芸能人が好きでないことも理由の一つであるが-。
 シリーズ初の長編小説であるが、内容的には、一貫した場面を串刺しにして短編を編んで一冊にするほうが味わい深くなると感じる。逆な言い方をすれば、この小説は短編小説を練って繋げたようなものである。

 <相沢沙呼 『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』(講談社、2019年)>:『このミステリーがすごい』および『本格ミステリ・ベスト10』(両者とも2020年版)の第1位。霊媒・霊視などという非科学的空間は好みでなく、それを肯定的に描く物語は殆ど読んだことはない。しかし、この本には「すべてが伏線」「本格ミステリー」とあり、読む側を驚かせるトリックがあるのではないか、まして書店では平積みにされているし、ということで『風間教場』とともに衝動買いした。そして、蠱惑的な翡翠さんと推理作家の香月史郎-この名前もアナグラム-とともに三つの謎を解いていく。本作に流れるシリアル・キラーをどう解決するのかと思っていたなら三つの事件の解決がすべて伏線になっていた。三つの事件を霊媒的に解いたとされるプロセスは実は霊媒など無関係であることも説かれる。新鮮であり組み合わされた謎とき、楽しめた。ただ、翡翠さんが香月と向き合って最後の謎ときをするとき、それまでの彼女からの豹変振りがどうもしっくり来ない。可愛くとも女性はそういうものなのかと思えば納得はするのだが。

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