2020年5月16日土曜日

AV女優の本、女性作家のハードボイルド

 <沙倉まな 『春、死なん』(講談社、2020年)>:木更津工業高専生だったときの19歳頃にAVデビューしたとのことで、本作には『群像』に掲載された「春、死なん」と「ははばなれ」の2編が収められている。文章は上手いと感じたが、小説としてはどうかなと思う。書名となっている表題作はいろいろと詰め込みすぎて発散気味になり、ばらばらのまま非現実性を現実っぽくみせて着地させたようになっている。70歳の男性に焦点を絞っているようだが、そこに死んだ妻や、温和しげな息子と輪郭が不明瞭な嫁、中途半端な孫、かつて一度同衾した1歳年下の女、それらがバラバラになっている。もう一編はつまらない。
 工業高専在学の女性が性行為の躰をカメラの前に曝す心境は全く理解できないし、想像も出来ないが、そのような女性がどのように文才を発揮しているのか、帯に書かれた高橋源一郎の「どれもありふれた光景のはずなのに、どうして、こんなにも新鮮なんだろう」が読書欲を刺激し、書店で衝動買いした1冊。

 <柚月裕子 『凶犬の眼』(角川文庫、2020年)>:10日に衝動買いした4冊を4日間で読んだ。小説や軽い本は早く読み終えてしまう。
 本書の作者の本は『孤狼の血』から始まり、本書はそのシリーズの2作目。広島県の架空の地における警官とヤクザの物語。
 3作目が刊行されているが文庫本になるまでは読まない-本作のように文庫化にあたっては加筆修正があるかもしれないし-。

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