2020年5月5日火曜日

嬉しいマスク、明治を描く本

 自宅を設計建設した工務店から臨時の通信誌が届いた。中にはマスクが8枚入っていた。自宅には50枚強のストックがあるとはいえ、近辺のドラッグストアにはまだマスクは販売しておらず、この工務店さんからの心遣いはとても嬉しく、お礼の言葉をファックスで送信した。

 <渡辺京二 『幻影の明治 名もなき人びとの肖像』(平凡社、2014年、2014年)>:明治を生きる人びとを活写しているとき、読む側としては二つの時代を読むことになる。通常はそこに描かれた明治という時代に思いを馳せる。一方では明治を見る作家が生きていた時代である。後者の場合、二つの時代に関する知識を持っていなければならないし、広範な深い思考も求められる。これが本当に難しい。それを気づかされるのは畏敬する本書の著者である。いつか読まなければならないと思いつつも放っておいた著者の沢山の本から近代を扱う本書を開き、改めてそう感じ入った。
 1~3章までは小説の作家をあつかっている。山田風太郎・坂口安吾・大下宇陀児・司馬遼太郎などである。正直なところ、対象となる作品を読んでいないのに著者の詳説を読んでもなかなか入り込めなかった。4章以降は、士族の反乱、民権運動の中で一般的には知られていない人を論じ、最終章では内村鑑三を取上げている。いずれも明治という時代の「谷間」を照射して人びとを物語る。歴史学者がものする歴史書とは異なった視座を与えてくれる。

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