2020年5月22日金曜日

坂口安吾

 坂口安吾は魔の退屈と歯の痛みを書いた。尿管結石と前立腺炎は味わったことはなかったのであろう。
 20日、数ヶ月ぶりに外食をした。混むのはいやなので11時の開店直後に馴染みの店に入りラーメン+α。久しぶりなのでたったこれだけで解放された幸福感を味わえた。
 ついでに、車を置いていたイトーヨーカドーの小さな書店で本を眺め、ついつい小説を2冊衝動買い。小説は読んでしまえば段ボールに放り込んでしまい、ある程度の数がまとまれば売ってしまうだけ。小説は定期的な消耗品である。ここ暫くはその消耗品に安易に手を出していることに少しばかり後ろめたく、高校校歌の「難きを忍び 易に就かず」の一節をふと思い浮かべる。

 <坂口安吾 『不良少年とキリスト』(新潮文庫、2019年/初刊1949年)>:初刊からは2編が外され、3編が追加されている。収められている全編は1947-48年の発表であるから自分がまだこの世に生まれる1~2年前。口絵の写真(銀座ルパンで林忠彦が撮影)はもう昔から見慣れているものだが、安吾の背中が写っていることは初めて知った。2018年にはじめてトリミングなしで公開されたもので、多くの人が驚いていたらしい。
 座談会に臨んでいる面々は安吾・太宰治・織田作之助・平野謙で、20歳前後に無頼派と第三の新人の作家に入れ込んでいたので、この作家・評論家たちはなじみ深く、座談会は20歳前後のかつての自分からみても既に20年ほど前のものだった。なぜ無頼派や第三の新人の本をよく読んでいたのか-太宰は数冊でやめた-今ではよく分からないが、今も関心の強い戦後、その時代の作家ということであったからであろう。
 「不良少年とキリスト」、ストレート、小気味よく圧巻、少しばかりフツカヨイの匂い。掌編の「復員」は若松孝二監督の「キャタピラー」を思い出した-復員兵の心境は真逆だが-。

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